コーチングを体得するには、土台となるスキルの理解が不可欠です。主要スキルを理解することでコーチングの本質がわかり、習得効率も高まっていくでしょう。
今回はコーチングスキルとは何かをおさらいしつつ、5つの主要スキルやスキルを高めるメリット、習得方法、向上のコツなどを解説します。実践で使える例文も紹介しているので、ぜひ試してみてください。
【この記事でわかること】
- コーチングスキルとは、目標の設定から達成までをサポートするための対話力です。
- コーチングで特に必要とされるのは「傾聴力・質問力・承認力・フィードバック力・リクエスト力」の5つです。
- コーチングスキルを高めることは、コミュニケーション力の向上やリーダシップをさらに発揮すること、職場での課題解決などに有効です。

コーチングの世界水準である、国際コーチング連盟(ICF)の資格を持つコーチングスクール代表の浅井がわかりやすく解説します!
コーチングスキルとは何か?
コーチングスキルとは、目標の設定から達成までをサポートするための対話力を意味します。対話をしながらクライアントの思考を整理し、前向きにアクションを促せるように支援します。
コーチングスキルは知識や技術を教えるだけのスキルではありません。あくまで対話によって対象者が自分自身で気づきを得られるようにするスキルです。
特定の専門分野がなくても、誠実に対話ができる人であれば、最低限のスキルを学ぶことでコーチングができるようになります。
個人のキャリア形成、組織の課題解決に向けてコーチングスキルを習得したい方は、恐れず学習を始めてみるとよいでしょう。
コーチングの概要やティーチングとの違い、やり方などを詳しく知りたい方は下記の記事もお役立てください。

コーチングに必要な5つの基本スキル
コーチングに求められる対話力は、さらに細かい基本スキルによって成り立っています。
具体的には、傾聴力・質問力・承認力・フィードバック力・リクエスト力の5つです。
それぞれの基本スキルについて習得ポイントや活用方法も含めて解説します。
傾聴力
傾聴力とは、相手の話にじっくりと耳を傾け、考え方や感情、課題などを理解して寄り添うコーチングスキルです。
傾聴と聞くと誰でもできるように思うかもしれませんが、ただ話を聞くだけではスキルを発揮できません。
「好き嫌いの気持ちを抑える」「客観的な立場に立つ」「話を否定しない」など、信頼関係を構築するための視点が求められます。
【傾聴力の習得ポイント】
- 相手の話を途中で遮らないように我慢する
- 大げさに思われない相槌を模索する
- 相手の表情や声のトーン、仕草などにも着目する
【活用方法】
- 新入社員の仕事に関する悩みを聞く
- 取引先の課題に耳を傾ける
- 友人の転職や結婚の愚痴を聞く
質問力
質問力は、問いかけによって対象者の現状を整理させ、目標達成に必要な考え方や手段などを導き出させるコーチングスキルです。
視点や見方を変えたり、新たな発見を与えたり、アイデアを深めたりするきっかけを与えます。
答えづらい質問や不快に思わせる質問、意味のない質問をしないよう、相手の立場を深くイメージできる想像力も求められます。
【質問力の習得ポイント】
- 答えや解決方法を教えないように意識する
- こちらの考えに誘導する質問をしないようにする
- 質問のパターンと得られる効果を想定する
【活用方法】
- モチベーションが低い部下に苦痛な業務について質問する
- サッカーがうまくなりたい子どもにシュートが決まらない理由を質問する
- 早起きできない原因を自分に問いかけてみる
承認力
承認力とは、相手の成長や変化を認めて安心感を引き出すコーチングスキルです。
一般的には喜んだり、ほめたりして承認します。
対象者が気づけていない成果を見落とさない察知力が必要です。
成果が出ていない場合でも、相手のやる気をそがないよう、目標達成に向けたプロセス、努力を認める包容力も求められます。
【承認力の習得ポイント】
- なるべく相手の名前を呼ぶように心がける
- 相手の感情を否定しないように意識する
- 相手が褒めてほしいと思う事柄をイメージする
【活用方法】
- 部下が仕事でミスをしなくなったことを喜ぶ
- 資格学習を1か月継続できた事実を自己認識する
- 塾や学校の先生がテスト結果について生徒をほめる
フィードバック力
フィードバック力は、行動結果を振り返り目標達成に必要なことを伝えるコーチングスキルです。
対象者が前向きな気持ちで、新たな気づきを得られるように働きかけます。
ときにはネガティブなフィードバックも必要ですが、やる気を削いだり、反感を抱かれたりする恐れがあります。
現状の信頼関係を見極める判断力や、自分が正しいと思いこまない冷静さも必要です。
【フィードバック力の習得ポイント】
- 事実から想定される可能性を客観的に提示する
- 自分がフィードバックを受けたときの気持ちを想像してみる
- 固定観念に縛られないようにする
【活用方法】
- クライアントに成果が出ない原因を客観的に伝える
- 部下が気づいていない失敗について一緒に振り返る
- メンバーが提出物の締め切りを守れなかった回数を共有する
リクエスト力
リクエスト力は、相手を励まして行動を促すコーチングスキルです。
相手が自分で決めたことを行動に移すように要望します。
本人の自発的な行動を後押しするような声掛けが基本となりますが、迷いを断ち切るために「~してください」の形で言い切るケースや、「あなたならできる」「君なら大丈夫」など、勇気づける表現が有効なケースもあります。
相手や状況に合わせて、言葉や表現などを使い分ける判断力が必要です。
【リクエスト力の習得ポイント】
- まずは「〜してみるのはいかがでしょう?」の形で提案してみる
- ハードルの低いことからリクエストしてみる
- 自分が過去に言われて勇気が出た言葉を振り返ってみる
【活用方法】
- スポーツトレーナーが選手にトレーニング回数を増やすように伝える
- 新入社員に取引先と1人で打ち合わせをするようにお願いする
- 医師が患者に調理の楽しみを伝えながら食事療法の実践を促す
コーチングに必要なスキルの種類一覧
コーチングスキルを磨くには、主要スキルとともにさまざまな能力が必要になります。自分に不足している能力が一目でわかるよう、コーチングに必要なスキルの種類一覧を表にまとめてみます。
スキル | 概要 |
---|---|
信頼関係構築力 | 安心して話し合える関係性を構築する能力 |
共感力 | 相手の悩みや後悔などを自分事として感じ取る能力 |
言語化能力 | 対話の中で最適な語彙を選択して応対できる能力 |
分析力 | 成長や失敗の原因、要因を見つけ出す能力 |
想像力 | 相手の立場をイメージして配慮できる能力 |
察知力 | 相手の良い変化、悪い変化を機敏に感じ取れる能力 |
包容力 | 相手の失敗に動じず温かく見守れる能力 |
判断力 | 踏み込んだ対話ができる段階かどうか見抜ける能力 |
スケジュール管理力 | 目標達成に向けた現実的なスケジュールを提案できる能力 |
モチベーション管理力 | やる気を維持するための声掛けや仕組みづくりができる能力 |
リスクマネジメント力 | 目標達成に向けた行動に伴うリスクを予見できる能力 |
提案力 | 行動してみたいと思えるアイデアを提示できる能力 |
リサーチ力 | 相手に役立つ情報を臨機応変に収集して伝えられる能力 |
忍耐力 | 成長や成果が出るまで辛抱強くサポートする能力 |
一つひとつの能力を意識して磨いていくと、傾聴力・質問力・承認力・フィードバック力・リクエスト力も向上していきます。

コーチングに必要なスキルはたくさんあって驚くかもしれませんが、相手の成長を願いながら真摯に向き合うことで、自然と必要な能力も身についていきますよ!
コーチングスキルを高めるメリット
コーチングに必要なスキルについてご理解いただけたでしょう。人によっては学習意欲を保てず、習得を諦める方もいるかもしれません。
自発的に学び続けるには習得のメリットを知ることが重要です。引き続き、コーチングスキルを習得して高めるメリットについて解説します。
コミュニケーション力が向上する
コーチングスキルを磨くと、相手の立場を尊重する姿勢が身につきます。
コミュニケーションを交わす際に、自分の意見を相手に押しつけたり、話を途中で遮ったりするなどして、相手に不快な思いをさせることも少なくなります。
仕事やプライベートを問わずコミュニケーションが円滑になり、関係性を悪化させずに自分の考えや意見を伝えられるようになるでしょう。

コーチングスキルを学ぶと自分に自信を持てるようになるため、相手に配慮しつつも踏み込んだ話ができるようになります!
リーダーシップを発揮しやすくなる
コーチングは対話で人々を理想の方向へ導く行為です。リーダーに求められる行為ともほぼ一致しています。
コーチングスキルを習得すれば、メンバーへのヒアリングや、モチベーション管理、目標設定なども自信を持って行えるようになります。
リーダーに必要な能力も同時に身につくため、リーダーシップも発揮しやすくなるでしょう。

チームの力を引き出したいという方にも、コーチングスキルを学ぶことはとてもおすすめです!
コーチングとリーダーシップの関係については下記の記事で詳しく解説しています。

職場の課題を解決しやすくなる
コーチングスキルは、さまざまな職種の課題を解決するのに役立ちます。
たとえば看護師は、患者さんに対して療養上の世話をしたり診療の補助をしたりする職種です。患者さんの体と心に寄り添い、必要な看護を判断します。
患者さんによっては、病状によって将来に希望を見い出せないケースも珍しくありません。どうやって励ませばよいか悩む方も多いでしょう。
その点、コーチングスキルを習得していれば、患者さんが退院後にやりたいことに気づかせ、前向きに治療を進めていけるように導きやすくなります。

ほかにも、教員や営業職、介護職など、さまざまな職種でコーチングが役立ちますよ!
コーチングスキルを習得して高めるには?
コーチングスキルを習得する方法はさまざまあります。自分に適した方法を見つけることができれば、コーチングスキルをスムーズに習得して向上させられるでしょう。
ここではコーチングスキルを習得して高める方法について解説します。コーチングスキルを高めるにはどうすればよいか迷っている方は参考にしてみてください。
本を読む
コーチングスキルについて理解を深めるのに役立つのが本です。
傾聴や質問、承認などのスキルはもちろん、クライアントの成長を促すための視点、コーチングの事例などを学べます。
電子書籍を選べば、家事や育児の休憩中、仕事に向かう電車内など、隙間時間の学習も可能です。
どの本を選べばよいか迷う方は、下記の記事でプロが厳選したコーチング本を紹介しているので、気になった本から読み進めてみてください。

ロールプレイングで実践する
座学だと知識が定着しづらく、コーチングスキルを発揮できるレベルに到達しません。コーチ役とクライアント役に分かれて、実際にコーチングをロールプレイング演習で実践する方法も取り入れましょう。
傾聴や質問、承認、リクエスト、フィードバックなどを意図的に組み合わせることで、コーチングに必要なスキルを効率的に習得できます。
演習の難易度が高そうであればシナリオを用意して、感情を込めながら読み合わせする方法も検討してみるとよいでしょう。
研修・セミナーに参加する
コーチングスキルを高めるための研修・セミナーも開催されています。
コーチングの基本プロセスや、目標達成に向けた行動案策定、部下と信頼関係を構築する方法などを学べます。
ペアワークでコーチングスキルを実践的に学ぶことも可能です。
質問しやすい環境を求めるのであれば、少人数制の授業を探してみるとよいでしょう。
資格を取得する
コーチングスキルを実務に活かしたいのであれば資格取得の学習方法がおすすめです。
資格を取得すれば客観的に実力を証明できるため、チームや組織、取引先との関係の中で自信を持ってコーチングができるようになります。
なお、コーチング資格は種類によって知名度や信頼度、費用なども変わってきます。
自分に適したコーチング資格、取得の流れなどを知りたい方は下記の記事をご覧ください。

コーチングスクールを利用する
コーチングスキルは、短期的に簡単なテクニックを学ぶだけでは習得できません。個々の人格を土台として必要な能力を丁寧に磨き、成熟させる必要があります。
本質的なコーチングを学ぶには、コーチングスクールでプロからカリキュラムを提案してもらうのもおすすめです。
ただ、コーチングスクールはたくさんあり、指導方法や信頼性もそれぞれ異なります。自分に合わないスクールを利用すると成果が出ないだけでなく、途中で挫折するかもしれません。
失敗しないコーチングスクール選びのポイントについて知りたい方、おすすめのスクールを知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。


コーチングスキルの実践に役立つ例文
具体的なコーチングスキルを把握しても、使う言葉がわからないと実践しづらいです。例文を知っていても、使う場面を理解しなければ、必要なときに話せません。
ここでは、コーチングスキルの実践に役立つ例文をさまざまな観点にまとめてご紹介します。
人物理解に関する例文
- 「最近楽しいと感じていることはありますか?」
- 「仕事で最もやりがいを感じることはなんですか?」
- 「日常で特にストレスを感じる瞬間を教えてください。」
- 「1人で過ごすのと友達と過ごすのではどちらがどのように好きですか?」
- 「尊敬している人物はいますか?」
コーチングでは相手を正しい方向に導くために、考え方や性格、長所、短所などを知る必要もあります。
相手の価値観とは別の方向性に導いてしまえば、不向きな仕事を目指したり、居心地の悪いチームに所属したり、苦手な資格に挑戦したりするかもしれません。
その人が自分らしく輝ける将来の実現には人物理解が不可欠です。
コーチングスキルを習得するにあたって人物理解に関する例文も活用してみてください。
目標設定に関する例文
- 「現在の状況がどう変わったらうれしいですか?」
- 「本日のセッションで目指すゴールはどうしましょうか?」
- 「3年後にどのような成果を出したいですか?」
- 「特に叶えたい目標は何ですか?」
- 「どの目標が達成しやすそうですか?」
コーチングスキルを磨くうえで目標設定の練習が必要です。すぐに1つの目標を定めるのではなく、考えられる目標を複数考えられるように対話をします。
選択肢が多ければ視野が広がり、新たな可能性に気づきやすくなるからです。
緊急度の高い目標については自然と達成されやすいので、迷ったときは緊急度が低く重要性が高い目標の設定を提案してみるとよいでしょう。
行動促進に関する例文
- 「いつごろから始められそうですか?」
- 「もう少し短い期間で達成してみるのはいかがでしょう?」
- 「どのような支援があれば行動しやすいですか?」
- 「試した結果を次回お会いしたときに教えてくださいね。」
- 「あなたならできると確信しています。」
- 「行動できなかった理由は何だったと思いますか?」
コーチングで目標を設定しても、行動なくして成長しませんし、成果も出せません。行動を促進するような対話もコーチングスキルの習得には不可欠です。
ただ、無理に行動させると失敗の責任を問われることもあるでしょう。過度なプレッシャーを与えず、納得して自律的に動けるよう、慎重に言葉を選ぶ必要もあります。
仮に行動できなかった場合は、客観的に事実と向き合えるように促し、原因を一緒に探っていきましょう。
コーチングスキル習得の成功事例
コーチングスキルを習得すると、どのように人生が変わるのか、気になった方もいるでしょう。コーチングスキルを習得した方の成功事例を挙げてみます。
- 取引先の話を深く聞いて正しい提案ができるようになった
- 仕事で自分を必要としてくれる人が増えた
- 専門外の分野でも人の役に立てるようになった
- 自分自身の可能性を信じられるようになった
- 自分の人格を磨くための方向性に気づけた
コーチングスキルを習得すると、身近な人の役に立てるようになるため、人から必要とされやすくなります。周囲から必要とされると自信が生まれることにも気づけます。
コーチングスキルを習得すれば、人としてより深い生き方をするためのヒントまで得られるでしょう。
コーチングスキルの習得に迷ったときの相談先
ここまでの説明でコーチングスキルを習得する意義について深くご理解いただけたでしょう。ただ、新しいことを独学で学ぶのには不安があり、自分でも習得できるか迷う方も多いはずです。
コーチングスキルの習得に迷ったときはCAM Japanにご相談ください。
CAM Japanは、コーチングスキルだけでなく土台となる人格や在り方を磨けるコーチングスクールです。世界水準となる国際コーチング連盟ICFの認定を受けています。
人格や在り方(BEING)とスキル(DOING)の両方を丁寧に磨きながら、自分に関わるすべての人をサポートできるコーチングスキルを習得できます。クラスや宿題などを通して実際にコーチングを行うため、実践経験を積みやすい環境です。
チャットツールで気軽に講師に質問できるほか、仲間と交流しながら継続的に学べる自習コミュニティにも参加できます。
無料コーチングスクール説明会を開催しているので、コーチングスキルの習得に迷っている方は、ぜひ一度説明会に参加してみてください。
コーチングを学んでスキルアップして活躍の幅を広げる
今回は、コーチングスキルの概要をはじめ、具体的に必要な能力や習得する方法などをご説明しました。
コーチングスキルは、対象者を理想的な方向に導くための対話力であり、傾聴力・質問力・承認力・リクエスト力・フィードバック力といった能力が求められます。
コーチングスキルを習得して高めるには、資格の取得や本、研修、ロールプレイなどの手段がありました。個性を生かしながらコーチングスキルを深めたい場合は、スクールでプロのカリキュラムを提案してもらうのもおすすめです。
今回紹介したように、コーチングスキルを習得して成功した事例はたくさん存在しています。コーチングスキルを習得すれば、日常生活やビジネスなどで活躍できるチャンスが増えていくでしょう。
コーチングを学んでスキルアップして活躍の幅を広げ、たくさんの人とコミュニケーションの機会を持ち、人生を充実させてみてください。
コーチングスキルに関するよくあるQ&A
今回の記事でコーチングスキルの全体像から習得するまでの流れがご理解いただけたでしょう。そのほか、コーチングスキルに関するよくある質問にもQ&A形式でお答えします。