コーチングは人材育成やマネジメントの手法として近年注目を集めており、コーチングの資格取得を検討している人も増えています。
しかし「コーチングの資格って必要なの?」「どの資格をとれば仕事に生かせるの?」など、わかりづらいと感じている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、コーチング資格の種類、特徴、費用について詳しく説明します。どの資格を取得すればいいのかが分かるようになりますよ!

コーチングを身につけるメリット
コーチングは机上の学問ではなく、職場や家庭といった様々な場面で使うことができる有効なコミュニケーション手法です。コーチングを習得するメリットについて説明します。
目標達成の技術が身につく
コーチングはコミュニケーションを通じて相手の目標達成や課題解決をサポートする技術です。いくつかのフレームワークを用いながら、相談者が軸となり対話することで目標達成に導きます。
コミュニケーションの過程で、効果的なゴール設定や課題の発見・具体化・優先順位付け、行動計画の作成方法などについて学べるでしょう。
コミュニケーション能力が向上する
一方通行のコミュニケーションになりがちなティーチングと異なり、相手への問いかけで気づきを与え、意識と行動を変化させるのがコーチングの特徴です。
承認、傾聴、質問、リクエスト、フィードバック、これらを繰り返し行うことで相手の考えを引き出せるようになります。
コーチングを学ぶ中でコミュニケーション能力が向上し、日常生活や人間関係の向上に役立てることができるでしょう。
セルフコーチングにより自己肯定感が高まる
コーチングを学ぶことにより自分で自分の中にある課題に気づき改善を行っていく、セルフコーチングを行うことも容易になります。
自分で決めた目標を達成するために、自己決定した行動をとっていくため徐々に自信がついていくでしょう。継続して成功体験を積むことができれば成長が実感でき、自己肯定感を高めることにつながります。
コーチング資格をとるメリットとは
コーチングの資格を取るメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 資格取得の過程で自信がつく
- クライアントから信用してもらうきっかけになる
- 学習のペースメーカーになる
- コーチングのスキルを体系的に効率よく学べる
- 幅広いケーススタディが学べる
- 資格保有者同士のコミュニティに参加できる
- 資格に関連する団体のサポートを受けられる
コーチング資格の必要性について
コーチングの資格は国家資格ではなく、全て民間資格です。
弁護士や税理士のような、資格なしでは業務ができないという独占業務ではありません。コーチングを仕事にするために資格はマストではありません。
また資格取得者自体も多く希少性が高いとはいえないことや、スクールで集客の方法は教えてもらえないことなどを考えると、資格取得が収入に直結するとは言い難いのが現状です。
コーチングを仕事にするために資格は必須ではなく、資格を取得したからといって仕事にできるわけでもありません。
ですから、極端に言えば資格なしでコーチングで稼ぐことも理論上は可能です。クライアントが「資格なんて気にしないよ」という人であればなにも問題はないでしょう。
それに、コーチングを学ぶ目的が「日常生活や家庭内のコミュニケーションに活かしたい」といった程度であれば、そもそも資格がなくてもなにも問題ありません。
ですが、実際には資格なしでコーチングを仕事にするのは難しいといえます。
どれだけ学んできたのか、どこで学んできたのか、どれだけの実績があるのか、こうした情報をもとにクライアントはコーチに依頼するわけですから、コーチング有資格者 かつ 実績や信頼がある人が結局は選ばれます。
目的に合ったコーチング資格をとる
コーチング資格は、大きく以下の3つに分けられます。
- 国際コーチング連盟(ICF)認定資格
- ICF認定スクールの独自資格
- その他スクールの独自資格
どの資格を取得すればいいのかは、コーチングを学ぶ目的やコーチングを学んで将来的にしたいことによって決めるのが良いでしょう。
ただし、「会社で部下のマネジメントに活かしたい」、「取引先のニーズをより深く把握したい」といった目的でコーチングを学ぶ場合、資格が有効の場合が多いです。取得の過程で実践的な知識を身に着けたり、取引先からの信頼を獲得しやすいためより成果に繋げやすくなります。
また、プロコーチを目指す場合にも、クライアントから信頼を得る手段として資格が有効です。
資格・認定発行元 | 資格名 | 知名度・信頼度 | 会員数 |
---|---|---|---|
国際コーチング連盟(ICF)認定資格 | ICF認定資格 | 非常に高い | 4.7万人 |
ICF認定スクールの独自資格 | 各スクールによる | 各スクールによる | 各スクールによる |
その他スクールの独自資格 | 各スクールによる | 各スクールによる | 各スクールによる |
また資格によって学べる内容や有効性は異なるため、目的としっかりマッチする資格やスクールを選ばなければなりません。
コーチング資格はその資格発行団体やスクールの知名度によって、世間からの信頼度・信用度といった有効性が変わります。
資格によっては講義の受講時間や実践経験の有無のような、資格取得までの要件が厳しいため、自分に合ったスクールを選ばなければ時間も費用も大きく損してしまうことになるでしょう。
国際コーチング連盟(ICF)認定資格 特徴・費用・期間
国際コーチング連盟(ICF)は、国内外で圧倒的な信頼と知名度を誇るコーチング業界最大級の非営利団体です。
ICF認定資格は取得のハードルが高いため、専門性や実践スキルの取得を含めてコーチングの仕事を本業や副業にしていきたい人におすすめです。
ただ、上記のようにコーチング単体を仕事にしたい人だけではなく、「本業のマネジメントで活かしたい」「コミュニケーションのために勉強したい」といった目的の方にもおすすめです。
せっかくコーチングを身につけるならば、どんな目的であれ、国際標準で質の高い学びを受けるに越したことはありません。
それでは、国際コーチング連盟(ICF)認定資格の特徴や費用、取得までの期間について説明します。
国際コーチング連盟(ICF)認定資格の特徴
国際コーチ連盟(International Coaching Foundation)が発行する資格には3種類ありますが、まずは基礎レベルのACC(アソシエート認定コーチ)を取得する必要があります。
経験とトレーニング時間などの厳格な条件によって、認定資格をランクアップすることができます。
資格名 | 満たすべきトレーニング時間 | 必要なコーチング経験 |
---|---|---|
ACC (アソシエート認定コーチ) | 60時間 | 8人以上のクライアントと最低100時間のコーチング |
PCC(プロフェッショナル認定コーチ) | 125時間 | 25人以上のクライアントと最低250時間のコーチング |
MCC(マスター認定コーチ) | 200時間 | 35名以上のクライアントと最低2,500時間のコーチング |
全世界では13000名が資格取得しており、2021年8月現在日本人全体での資格保有者数はACC 360名、PCC 333名、MCC 47名となっています。
またそれぞれの資格を取得するための方法としては主に以下の内容が必要とされます。
- 認定条件を満たすためのトレーニングプログラムの受講
- 認定条件(コーチング時間)を証明する書類や記録の提出
- CKA(コーチ・ナレッジ・アセスメント)の受験
- 実技試験の受験
国際コーチング連盟(ICF)認定スクールでトレーニングプログラムを受講し、その後ICFへ関係書類の提出や試験の申し込みを行うというのが資格取得までの大まかな流れとなります。
国際コーチング連盟(ICF)認定スクールのトレーニングプログラムについて
国際コーチング連盟(ICF)認定スクールには、簡単にいうとランクのようなものがあります。
次の3種類(ACTP / ACSTH / CCE)があり、資格取得を目指すのであれば、ACTP もしくは ACSTH のプログラムを提供しているスクールを選ぶことをおすすめします。
国際コーチング連盟(ICF)認定スクールを中心に、おすすめのコーチングスクールをまとめた記事もぜひご参考ください!

資格取得までの費用
資格取得にかかる費用は、ICFでの資格認定費用と各スクールでのプログラム受講料の合計額です。
以下はACTPまたはACSTHパスにてACC取得を目指した場合の費用例です。
(※ICF審査時に一律でかかる審査料は1ドル=110円とした場合)
スクール名 | ICF資格取得にかかる費用 |
---|---|
コーチ・エィ アカデミア | 1,683,000円 |
CTIジャパン | 1,540,000円 |
銀座コーチングスクール | 412,500円 |
コーチアプローチミニストリーズ(CAM Japan) | 355,000円 |
コーチ・エィ アカデミア
プレミアムコース受講料 1,650,000円
ACC審査料(ICF非会員の場合) 300USドル
合計1,683,000円
CTIジャパン
コアコース+上級コース受講料 1,507,000円
ACC審査料(ICF非会員の場合) 300USドル
合計1,540,000円
銀座コーチングスクール
国際資格取得コース受講料 379,500円
ACC審査料(ICF非会員の場合) 300USドル
合計412,500円
コーチアプローチミニストリーズ(CAM Japan)
国際資格取得コース受講料 355,000円
ACC審査料(ICF非会員の場合) 300USドル
合計355,000円
期間
ICFに申請を行った後の審査期間はパスによって異なりますが4〜14週間となっています。ただしスクールやコーチングの実践期間も必要となるため、実際はそれ以上の期間が必要です。
一番ハードルの低いACCをACTPパスで申請した場合でも最低160時間+審査期間4週間が必要ですので、仕事をしながら取得を目指す場合には半年以上はかかると考えておいた方が良いでしょう。
ICF認定スクールが独自発行する資格の特徴・費用・期間
ICF認定資格以外に、ICFから認定を受けているスクールが独自で発行する資格があります。
ICF認定を受けているので世界水準の学びを提供していることが多く、取得条件はそれほど厳しくないため「何かしらの資格が欲しい」と考えている人にはおすすめです。ただし、資格の有効性はスクールの知名度に応じて変わります。
ここでは資格ごとの特徴や費用、取得までの期間について説明します。
CTI認定資格(CPCC)
ICFの認定を受けた世界で最初のカリキュラムとして有名な、コーアクティブ・プロフェッショナル・コーチトレーニングを通じて取得できる資格です。
CTIジャパンが発行しており2019年9月現在日本国内では約900人、世界では10000人が資格を保有しています。
プログラムは5つのコースからなるコアコースと上級コースに分けられ、両方を受講した上でCTIが実施する筆記及び口頭試験(日本語)に合格すると、CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)を取得できる仕組みとなっています。
費用と期間
コアコースと上級コース両方の受講費用合計が実際に資格取得までにかかる費用です。
コアコースと上級コース一括申し込み:1,507,000円
※各コース個別申し込みの場合は合計1,837,000円
コアコースは3日間で1つのテーマを受講する形式となっており、1ヶ月に1テーマしか受講できないため受講完了までは最短で5ヶ月かかります。
上級コースは受講完了まで最低6ヶ月かかるため、CPCC取得までは最低でもおよそ1年かかると考えておいた方が良いでしょう。
一般財団法人生涯学習開発財団(コーチエイ)認定資格
「コーチ・エィ アカデミア」での学びを通して受験できる資格で、一般財団法人生涯学習開発財団の後援を受けて1998年にスタートした日本で最初の「コーチ認定制度」です。
仕事やマネジメントの中で部下や相手の主体性を引き出しながら、目標達成や成長を促すことができる「コーチング型マネージャー」のための資格となっているため、主に企業内で管理職についている人にぴったりの資格と言えるでしょう。
プログラムを通してコーチングだけではなく、状況や相手に合わせて、指示・ティーチング・アドバイスなどのさまざまな関わりを効果的に活用することで、部下の育成や、組織の活性化、目標達成の実現に貢献できるようになります。
2020年1月現在8200人以上が取得しており、30項目からなるカリキュラムを受講することで資格が取得できます。
資格は以下の3種類があり、それぞれ申請条件が異なるため確認が必要です。
資格名 | 受験申請条件 |
---|---|
認定コーチ | コーチ・エィ アカデミアの01~08を受講。または、DCDクラスを全て履修1on1コーチを1クール(10セッション)受けている5名以上へのコーチング実践経験 |
認定プロフェッショナルコーチ | 認定コーチ資格の保有コーチ・エィ アカデミアの01~20を受講 |
認定マスターコーチ | 認定プロフェッショナルコーチ資格の保有コーチ・エィ アカデミアの01~30を受講1on1コーチを2クール(20セッション)受けている認定コーチ資格取得後に、5名以上へのコーチング実践経験 |
費用と期間
リーダー向けコースの費用は1,100,000円です。
2種類のコースがありますが、リーダー向けコースを受講すれば認定コーチ資格を得ることができます。リーダー向けコースの受講期間は12ヶ月です。
銀座コーチングスクール認定資格
全国に30箇所以上の拠点があり、日本のコーチング業界では老舗と言える銀座コーチングスクールが発行する資格です。
プロコーチとして、有料のコーチングセッションを提供するのにふさわしいレベルに達していることを認定する内容となっています。
以下のように2種類の資格があり、それぞれ申請条件が異なります。
資格名 | 主な申請条件 |
---|---|
GCS認定コーチ | 所定のGCSコースの受講を完了している有料無料問わずコーチングセッションの経験がある 筆記・実技試験に合格する |
GCS認定プロフェッショナルコーチ | GCS認定コーチとなった後、GCSクラス講師養成プログラムを受講・修了し、一定の要件を満たす |
費用と期間
資格申請にはGCSコーチングクラスのA~Dのすべて、または国際資格取得コースのクラスJ・Kを受講する必要があります。受講料と資格申請時の受験料の合計が資格取得にかかる費用です。
GCSコーチングクラスA~D受講料:198,000円
GCSコーチングクラスJ〜K受講料:236,500円
受験料:22,000円
合計220,000〜258,500円
資格取得までにかかる期間は、GCSコーチングクラス・国際資格取得コースどちらの場合も40時間ほどになっています。
NLPプロコーチ認定資格
一般的なコーチングの手法にカウンセリングやセラピーで扱う手法をプラスした、NLPという学問を学ぶことで取得できる資格です。
ICFからCCE(継続学習)プログラムとして認可されており、富や収入、対人関係や健康や病気といった専門的なテーマを扱えるコーチを目指せます。
NLPプロフェッショナルコーチとNLP上級プロフェッショナルコーチの2種類の資格があり、どちらも米国NLP&コーチング研究所公認のプログラムを受講し取得できます。
NLPプロコーチ認定資格取得の費用と期間
コースの受講費用が資格取得にかかる費用です。なお、上級コースはNLPプロフェッショナルコーチ認定コースの受講後でないと受けることができません。
上級コースには健康編・人間関係編・精神的豊かさ編・人生生き方編の4つがあり、全て受講するとNLP上級プロフェッショナルコーチの資格が取得できます。
NLPプロフェッショナルコーチ認定コース:477,400円
上級コース(4コースの合計):730,400円
合計1,207,800円
※全コース一括払いの場合は915,200円
NLPプロフェッショナルコーチ認定コースは10日間、上級コースは各コース3日間です。
最大22日間でNLP上級プロフェッショナルコーチの認定を受けることができます。
コーチアプローチミニストリーズ(CCAP認定資格)
コーチ的なアプローチを各々の専門領域にいかし、人間関係の質を向上させるカリキュラムを受講することで得られる資格です。授業はすべてWeb会議ツールを使ってオンラインで行われます。
CCAP認定資格取得までの費用と期間
コースの受講後CCAP資格が授与されます。CCAPコースの受講料は、264,000円です。
1回あたり1時間30分の授業が16週、その後11時間のグループワークと3ヶ月間にわたる認定コーチのコーチング演習を行うため、資格付与までは7ヶ月ほどかかります。
その他コーチングスクール発行の独自資格 特徴・費用・期間
ICFの認定を受けていないコーチングスクールが独自に発行している資格があります。
スクールの知名度によって有効性は変わりますが、実際はほとんど権威性がないと考えた方が良いでしょう。
これからコーチングを学びたいと考えている人や、時間はないが何かしらの資格を取りたいと考えている人にはおすすめです。
資格の特徴や費用、取得までの期間について説明します。
トラストコーチングスクール(TSC)認定資格
資格発行団体のTSCは、10年以上の実績と5000人以上の第一線で活躍するビジネスパーソンに選ばれ続けてきたコーチングブランドである、コーチングトラスト社が2015年にスタートしたスクールです。
世界数カ国にいるTSC認定コーチから直接講座を受講する方式となっており、受講完了後以下の2種類の資格が取得できます。
資格名 | 主な認定条件 |
---|---|
TCS認定コーチ | ・ベーシック・アドバンス両方の一般講座を受講完了する ・認定コーチトレーニングを受ける |
TCS認定プロフェッショナルコーチ | ・TCS認定コーチ取得後、TCS認定プロフェッショナルコーチトレーニングをうける ・筆記試験と面接試験を受け合格する |
TSC取得までの費用と期間
TCS認定コーチ
ベーシックコースとアドバンスコースの受講料 50,000円
認定コーチトレーニング受講料 137,400円
合計187,400円
TCS認定プロフェッショナルコーチ
TCS認定コーチ資格取得費用 187,400円
認定プロフェッショナルコーチトレーニング受講料 130,000円
合計317,400円
ベーシックコース・アドバンスコースともに2〜3時間で受講を完了できる内容になっています。また認定コーチトレーニングは90分程度、認定プロフェッショナルコーチトレーニングは各回3〜4時間程度で4〜6回実施します。
認定コーチになるまでの必要時間は約7〜8時間、認定プロフェッショナルコーチの場合は30時間ほどとなっているため、比較的短期間で資格取得できるといえるでしょう。
まとめ
コーチングを学ぶメリットやコーチング資格の必要性、資格ごとの特徴や実際にかかる費用について詳しく説明してきました。
コーチング資格は必ず取らなければいけないものではありません。独学をすることもでき、無資格でも仕事をすることは可能です。ただしコーチングを専業にしたい人や深く学びたい人にとって、資格取得は有効な手段といえるでしょう。
また発行団体によって資格の有効性や費用、期間は大きく異なるため資格選びは慎重に行う必要があります。決して安くはない費用と一定の時間がかかりますので、自分の目的に合った資格を選ぶことが非常に重要です。
