コーチングとカウンセリングは意味が似ていて区別しづらい言葉です。どちらを学ぶべきか、どちらを受けるべきか、悩むこともあるでしょう。
今回はコーチングとカウンセリングの違いが分かるように定義や職業、仕事、資格などの観点から比較してみます。コーチングとカウンセリングの選択に迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
Q&Aコーナーでセラピーとの違いにも触れているので、気になる方は最後までご覧ください。
【この記事でわかること】
- コーチングの目的は主に目標達成であり、カウンセリングの目的は心の回復や深刻な課題の解決です。
- コーチングは自己実現を支援する行為であり、治療行為ではありません。
- 人々の自己実現を支援したい方にはコーチングを学ぶのがおすすめです。
コーチングとカウンセリングの定義の違い
コーチングとカウンセリングは同じ言葉のように思うかもしれません。
結論としてコーチングとカウンセリングの定義は違います。
コーチングとカウンセリングの定義についておさらいしながら違いを解説します。
コーチングの定義
コーチングの定義の例は、クライアントの思考を刺激して、自身の可能性を最大化させるための対話です。
””コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことです。””
引用:WHAT’S COACHING?(ICF Japan)
質問をしたり、行動を促したりすることで、クライアントを最良の方向へと導いていきます。

ちなみにコーチングの定義は、馬車を意味する「Coach(コーチ)」が由来となっています!
コーチングの概要について詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。

カウンセリングの定義
カウンセリングの定義の例は、悩みを解決するために助言を与えたり、相談に応じたりすることです。
””なやみを持つ人に対し、それを解決するための助言を与えること。相談。””
引用:三省堂国語辞典
””「カウンセリング」の元々の意味は「相談」、「助言」のことですが、こころの診療においては、医師やカウンセラーが心の悩みを聞き、こころの専門家としての視点から指導や援助を行う治療を意味しています。””
引用:カウンセリングについて(厚生労働省)
相談者は、専門家の視点から悩みの解決に必要な助言を受けることで、目の前の深刻な悩みや課題を解決するヒントを得られます。
目的に違いがある
コーチングとカウンセリングの定義をふまえると目的に違いがあることが分かります。
コーチングの目的は、クライアントの可能性を最大化させることです。現在の状態から理想の状態に近づけていき、自己実現を支援します。

コーチングは目的地を目指す馬車が由来であることからも分かる通り、目標達成を目指して行われることが多いです!
その一方でカウンセリングの目的は、相談者の深刻な悩みや課題の解決です。辛い状態から通常の状態に近づけていきます。
カウンセリングは、治療という側面があることから分かる通り、回復や改善を目指して行われる傾向です。
コーチとカウンセラーの定義の違い
コーチングとカウンセリングの違いは、コーチングを行うコーチとカウンセリングを行うカウンセラーを比較することでも理解しやすくなります。
続いてはコーチとカウンセラーの定義の違いについて解説します。
コーチの定義
コーチ(Coach)という言葉の語源は、ハンガリーのコチ(Kocs)という地名が由来です。
コチで生産される馬車は非常に高性能で、搭乗者を安全・快適に目的地まで運んでくれるということで、ヨーロッパ各地に広まりました。19 世紀頃からヨーロッパ各地で馬車を指す意味として、コチという言葉が使われるようになりました。
その後、イギリスのオックスフォード大学の学生の家庭教師に対して、学習者を目標まで導いてくれるということで使われ始め、コチからコーチ(Coach)という言葉に変化し、スポーツ指導者にも用いられるようになりました。
引用:https://www.jfa.jp/coach/official/role.html

語源からくるコーチ(Coach)は、学習者やスポーツ選手を馬車のように下から支え、安全・快適に目標達成の手助けをしてくれる人を指します。その意味では、指導者(コーチ)は上から目線で怒鳴り散らしたり、理不尽なことを要求するのではなく、常に選手や子どもたちのことを支え、上達の手助けになる存在でなければなりません。
カウンセラーの定義
カウンセラーの定義の例として、相談員が挙げられます。
”相談員”
引用:三省堂国語辞典
たとえば、スクールカウンセラーは学校現場で児童や生徒からの相談に応じる専門家を意味します。心の悩みや不登校、いじめ、親子関係の問題など深刻なトラブルの解決を支援します。
参照:スクールカウンセラー(厚生労働省)
カウンセラーは、悩みや課題が生じたときに話を聞いてくれる存在です。特定分野の専門家であることがほとんどであり、自分では解決できない問題について意見を聞けます。

カウンセラーは、当事者だけでは解決できない深刻な悩みや課題に対応することが多い印象です。
役割に違いがある
コーチとカウンセラーの定義をふまえると、役割に違いがあります。
目標達成の手助けをするコーチの役割は、クライアントやチームメンバーの可能性を最大化し、最良の方向へ導くことです。クライアントやチームメンバーが成果を出せるように、目標設定や行動設計を支援します。
相談員を意味するカウンセラーの役割は、相談を受けることです。相談者の悩みや課題をヒアリングして解決方法を一緒に考えます。
コーチングとカウンセリングの定義の違いからも分かる通り、コーチは目標達成が成果として求められるポジションであり、カウンセラーは回復、改善が成果として求められるポジションであることが分かります。

コーチングとカウンセリングの違いについて混乱したときは、コーチとカウンセラーの役割に立ち返ってみましょう。
コーチングとカウンセリングの仕事の違い
コーチングとカウンセリングの違いは具体的な仕事を比較することでも理解しやすくなります。
コーチングとカウンセリングの仕事について確認してそれぞれの違いについて解説します。
コーチングの仕事
コーチングの仕事の例は下記の通りです。
- 1対1の対話
- 目標設定の支援
- アクションプラン策定
- 自己分析支援
- 価値観や強みのヒアリング
- 知識や経験の棚卸し
- モチベーション維持
- 行動伴走
- 目標に対する進捗確認
- フィードバックやリクエスト
- 講演活動
- 企業研修
- 人材育成 etc.
コーチングでは1対1の対話を中心に、目標設定の支援やアクションプランの策定などを行います。目標の設定やアクションプランの策定に伴い、自己分析や経験の棚卸しなどまで支援するのが一般的です。
クライアントが目標を達成できるよう、モチベーションの維持管理を行いながら伴走していきます。進捗も確認してフィードバックやリクエストをすることもあります。
そのほか、コーチングの経験を生かして講演活動や企業研修、人材育成にかかわるケースも少なくありません。

コーチングの仕事は多岐にわたり、学習しておくと働き方の幅を広げることもできますよ!
カウンセリングの仕事
カウンセリングの仕事の例は下記の通りです。
- 相談対応
- 相談者の課題整理、特性把握
- 専門的知見からの助言
- 意思決定に必要な情報提供
- 相談者の心理面のケア、症状の緩和
- ストレスマネジメント
- 相談者の状況について関係者と情報共有、情報交換
- 予防対策 etc.
カウンセリングでは、基本的に悩みを持つ方の相談に応じながら、相談者の課題や特性を整理して把握します。そのうえで、専門的知見に基づく助言を行い、意思決定に必要な情報も提供します。
カウンセリングを受ける方は、心に深い傷を負っているケースも少なくありません。症状を緩和させるためのストレスマネジメントも必要になります。ストレスを取り除く方法やストレスを和らげる方法を一緒に考えることもあります。
相談者の状況を関係者や関係機関と協力して改善していく場合は、情報共有や情報交換をするのも仕事です。相談者の悩みと向き合ってきた経験を活かして、組織やチームに予防対策を提案することもあります。

カウンセラーだけでは解決できない悩みもあります。関係者や関係機関との連携も重要になるでしょう。
励まし方に違いがある
コーチングとカウンセリングの仕事をふまえると、励まし方に違いがあると分かります。
コーチングでは目標達成に向けて支援をする中で、クライアントのモチベーションを維持しなければなりません。行動してみようと思えるような声かけや、自分にもできると思えるような声かけなど、やる気が出るような励ましが必要です。
カウンセリングでは回復、改善に向けて支援をする中で、相談者のストレスも管理しなければなりません。元気が出るような声かけや、気持ちが落ち着く声かけなど、ストレスが少しでも和らぐような励ましが求められるでしょう。

コーチングとカウンセリングの違いを理解しておかないと、語りかける言葉を誤ってしまう恐れがあります。励ましの効果が薄れてしまうかもしれません。
コーチングとカウンセラーの資格の違い
コーチングとカウンセラーにはそれぞれ関連する資格があります。
コーチングとカウンセラーの資格を知ることでも、コーチングとカウンセリングの違いについて理解しやすくなるでしょう。
ここではコーチングとカウンセラーの資格についてご紹介しつつ、コーチングとカウンセリングの違いについて解説します。
コーチングの資格
コーチングの資格として代表的なのが国際コーチング連盟(ICF)認定資格です。
ICFでは取得に必要な教育や経験の量に応じて、主に3つのコーチング認定資格を用意しています。
種類 | 満たすべきトレーニング時間 | 最低限必要となるコーチング経験 |
---|---|---|
ACCアソシエート認定コーチ | 60時間以上 | 100時間以上 |
PCCプロフェッショナル認定コーチ | 125時間以上 | 500時間以上 |
MCCマスター認定コーチ | 200時間以上 | 2,500時間以上 |
コーチング資格は、人々の潜在能力を引き出して創造性・生産性の源泉を解き放つ、人材の開発支援スキルを証明できる資格です。
資格取得者は、クライアントにポジティブな変化を与えて、大きな目標を達成する機会を生み出します。

コーチング資格の保持者は、クライアントの人生を変える重要な役目を担うことから、上位資格になるほど必要なトレーニングや経験の条件が厳しくなる傾向です。
カウンセラーの資格
カウンセラーに関する資格の例は下記の通りです。
種類 | 概要 |
---|---|
公認心理師 | 保険医療や福祉、教育、そのほかの分野で心理学に関する専門知識、技術を活かして相談、助言、指導、援助をする心の専門家 |
ケアストレスカウンセラー | メンタル疾患の疑いのある方への対応、メンタル疾患予防の啓発など、心のケアができる専門家 |
産業カウンセラー | 仕事や職場の人間関係などによって生じるストレスや心の問題について支援する専門家 |
カウンセラーの資格には、心の悩みや不安、課題の解決スキルを証明する資格が多い傾向であると分かります。

カウンセラーと聞くと心の悩みを聞いてくれるイメージが浮かぶのは、心理に関する資格が多いことも関係しているかもしれませんね。
コーチングやカウンセリングに関する資格は下記の記事でも紹介しています。


証明できるスキルに違いがある
コーチングでは、クライアントの潜在能力を引き出したり、リーダーシップ能力を向上させたりします。コーチング資格は組織やチームのメンバーに対する人材開発支援スキルを証明できる資格です。
その一方でカウンセリングでは、相談者の心の悩みを和らげたり、相談者を取り巻くトラブルを解決したりします。カウンセラー資格はケアスキルや課題解決スキルを証明できる資格です。

コーチングも相談者の心の悩みに寄り添うこともありますが、基本的には自己実現に向かって潜在能力を引き出すために実施されることが多いです。
なお、コーチングでは人材開発をするために5つの主要スキルが求められます。詳細については下記の記事もチェックしてみてください。

コーチングとカウンセリングはどちらを選ぶべき?
コーチングとカウンセリングを比較している方は、これからコーチングとカウンセリングを学ぼうとしている方や受けようとしている方などが多いでしょう。
それぞれの立場において、コーチングとカウンセリングのどちらを選ぶべきか迷うこともあります。
ここでは、コーチングとカウンセリングはどちらを選ぶべきか、学ぼうとしている方と受けようとしている方に分けて解説します。
学ぼうとしている方の選び方
コーチングを学ぶのがおすすめな人とカウンセリングを学ぶのがおすすめな人は下記の通りです。
【コーチングを学ぶのがおすすめな人】
コーチングは一人ひとりに最適な目標を設定して、人の可能性を最大化する対話です。
人が自分らしく輝く姿を見たい方、人を成長させることにやりがいを感じる方などは、コーチングを学ぶのが適しています。
コーチングを学べば、チームや組織で人材育成の効果を高めて、売上アップを目指すことも可能です。リーダー不足の課題を解決することもできます。

管理職や経営者など、マネジメント力を高めたい方や後継者不足に悩む方にもコーチングがおすすめです。


【カウンセリングを学ぶのがおすすめの人】
カウンセリングは、心の悩みやストレスを緩和するための対話です。
人が苦しんでいるのを見過ごせない方や、悩みをよく相談される方などであれば、カウンセリングを学ぶのが適しています。
カウンセリングでは深刻な相談にも応じなければなりません。辛抱強く悩みを聞ける忍耐力がない方には不向きだといえます。

過去にうつ病から回復した経験など、過酷な悩みを乗り越えた方がカウンセリングを学べば、多くの人々を救えるかもしれません。
受けようとしている方の選び方
コーチングを受けるのがおすすめな人とカウンセリングを受けるのがおすすめな人は下記の通りです。
【コーチングを受けるのがおすすめな人】
コーチングを受けるのがおすすめな人は、これから目指す方向に自信が持てない方、達成したい目標がある方、やりたいことが見つからない方などです。
コーチングでは、コーチに価値観や経験などについてヒアリングしてもらいながら、現状に最適な目標の設定、行動を促してもらえます。
誤った努力をすると時間を浪費し、成果が得られないこともあります。努力を無駄にしたくない方もコーチングを受けてみるとよいでしょう。

コーチングによって自分の内面と向き合う機会を持つことで、今まで気づけなかった発想が浮かぶようになり、挑戦意欲も湧いてきます。
【カウンセリングを受けるのがおすすめな人】
カウンセリングを受けるのがおすすめな人は、苦しい気持ちがおさまらず、日常生活に支障をきたしている方です。
たとえば、パワハラを受けていて会社に行こうとすると体調を崩してしまう方や、子育ての負担が大きく育児放棄したい気持ちが抑えられない方などが挙げられるでしょう。

ストレスをため込んでしまえば、精神を病んだり、うつ病になったりして、状況が悪化するかもしれません。なるべく早いうちにカウンセラーに悩みを聞いてもらい、改善策の提案、回復に向けた助言を受ける必要があります。
カウンセリングではなくコーチングを学ぶのにおすすめのスクール
カウンセリングではなくコーチングを学ぶのであれば、CAM Japanのようなスクールの活用もおすすめです。

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コーチングとカウンセリングの違いに関するよくあるQ&A
コーチングとカウンセリングの違いについてご理解いただけたでしょう。
コーチングとカウンセリングの違いについてさらに理解できるよう、よくある疑問にQ&A形式で解説します。
結論|コーチングとカウンセリングは支援のあり方が違う
コーチングは内面から新たな価値を創造する対話であり、能力を引き出して自己実現を追求する支援です。
カウンセリングは悩みや課題を分析する対話であり、心の状態を回復させつつ現実のトラブルを解決する支援です。
コーチングとカウンセリングは似ている言葉ですが、支援の在り方が大きく異なります。
コーチングとカウンセリングの違いを理解したうえで、どちらを学ぶべきか、どちらを受けるべきか慎重に考えてみてください。

コーチングとカウンセリングの違いをさらに詳しく知りたい方は、コーチングスクールのコーチにもぜひ質問してみてくださいね。