従来のトップダウンの意思決定だけでは解決できない課題も増え、企業経営においては以前よりも柔軟な思考が求められるようになりました。
企業の経営に関する課題に対しては、エグゼクティブコーチングの導入を検討してみるのもひとつの解決策となります。
「エグゼクティブコーチングの費用対効果が気になっている」「導入するメリットが知りたい」「どのようなコーチに依頼すれば良いのか分からない」という人もいるでしょう。
【この記事でわかること】
- エグゼクティブコーチングは、経営者や役員といったリーダー層の成長をサポートし、経営や組織全体の活性化に貢献するサービスです。
- コーチやコーチング会社によって価格設定は大きく異なりますが、料金相場は1セッション3万円〜10万円ほどです。
- コーチを選ぶ際は「ビジネス・経営経験」「クライアント実績」「相性」「コーチング導入前後のサポート」を確認しましょう。
エグゼクティブコーチングを専門とする、ビジネスや経営の経験・知識が豊富なプロコーチは、クライアントが客観的に自分自身を見つめ直し、時代や環境にあわせた最適な考え方や行動、経営判断ができるようにサポートします。
企業のトップ層の変化は、コーチングを受けた個人だけでなく組織全体の成長も促すため、エグゼクティブコーチングを活用したことがない方も、是非この記事を参考にしてみてください。

一般的なコーチングとの違いについても説明していきます!
エグゼクティブコーチングとは
まず前提として、コーチングとは、クライアントの持つ可能性や現状を把握したうえで、目標とする未来・状態まで主体的に進めるようにサポートするコミュニケーションスキルのことです。
その中でも、企業のトップ層を対象としたコーチングは「エグゼクティブコーチング」と呼ばれています。
エグゼクティブコーチングは、経営者や役員といったリーダー層の成長をサポートし、経営や組織全体の活性化に貢献するサービスです。
経営判断、周囲や部下のポテンシャルを引き出す関わり方など、クライアントがより良い成果を出せるようにサポートするのがエグゼクティブコーチングの役割です。
コーチング自体について気になる方は、下記の記事も参考にしてみてください。

経営者・役員を対象にしたコーチング
コーチングは、クライアントのポテンシャルを引き出すコミュニケーションスキルのため、さまざまな分野で活用されています。
コーチングの種類は、活用されている分野や対象者によって分かれ、エグゼクティブコーチングの場合、対象は企業の経営者・役員です。
また、個人事業主もエグゼクティブコーチングを利用することがあります。
一方で、企業の一般社員なども対象にしたコーチングは「ビジネスコーチング」と呼ばれます。
コーチングの種類によって内容や料金相場は変わってくるので、目的・予算に合わせてコーチングを活用してください。


一般的なコーチングとの違い
コーチングにはさまざまな種類がありますが、「コーチとのコミュニケーションを通じて、自身の理解を深め、新たな気づきを得て成長していく」という点は共通です。
しかし、一般的なコーチングとエグゼクティブコーチングを比較した場合、扱うテーマが異なります。
通常のコーチングで扱うテーマは私生活からビジネス全般のことまで幅広いのに対して、エグゼクティブコーチングは対象が経営者や役員ということもあり、企業経営に関する意思決定を扱うことが多いのが特徴です。
一般的なコーチングを企業の経営者などが受けることもあり、効果がないわけではありませんが、より経営に関する悩みや課題に特化したサービスがエグゼクティブコーチングだと考えてください。
エグゼクティブコーチングの料金相場
エグゼクティブコーチングの料金相場は、一般的なコーチングに比べて高くなります。
一般的なコーチングは1時間のセッションで1万円〜3万円程度が相場です。
そのため、月に2回の頻度で、半年継続する場合は、15万円〜30万円前後の費用になるでしょう。
一方、エグゼクティブコーチングは、コーチに求められるスキルや経験のハードルが高くなります。
コーチやコーチング会社によって価格設定は大きく異なりますが、比較的安価なケースでも1セッションは3万円〜10万円ほどです。
中には1セッションで10万円以上かかるケースもあるため、費用対効果をよく考えたうえでコーチングを導入するようにしましょう。
企業でコーチングを導入する場合、対象者が複数になり、個人で契約するより安くなるケースもあります。

サービス内容もコーチやコーチング会社によって違うので、各サービスの詳細を確認のうえ、見積もりをもらうことをおすすめします。
エグゼクティブコーチングのねらいと効果
エグゼクティブコーチングの対象は企業の代表や役員ですが、経営層の考え方や行動が変化することで、結果として組織全体が変わっていきます。
エグゼクティブコーチングの導入で期待される効果について説明していきます。
経営層のより良い意思決定を促す
コーチングでは、クライアントの考え方・行動の選択肢を増やして、自分自身でより良い答えを出せるようにします。
企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しますが、経営層はその悩みを他者に相談しづらい立場にあることも多いです。
そこで活用できるサービスが、エグゼクティブコーチングです。コーチは経営層の壁打ち役、相談役のような存在でもあります。
経営層は、自分自身で考え方や行動を変化させ、課題の解決にあたる力が非常に重要となってきますが、これまでのやり方にこだわらない柔軟な考え方を促すエグゼクティブコーチングは、経営層のより良い意思決定を後押しするでしょう。
コミュニケーションスキルが向上する
企業の代表や役員がコーチングに関する理解を深めることは、コミュニケーションの円滑化にも繋がります。
コーチとのコミュニケーションの中で、自身のマネジメントスタイルやリーダーシップの在り方を見直す機会は多いです。
また、プロフェッショナルなエグゼクティブコーチは、高いコミュニケーションスキルを持っています。
そのため、プロコーチとの一対一でのセッション内でも、話の聞き方や質問の仕方などで参考になる部分はたくさんあるでしょう。
組織全体の生産性がアップする
エグゼクティブコーチングの影響は、コーチングを受ける経営層だけにとどまりません。
企業の代表や役員がより良い意思決定をできるようになれば、従業員も働きやすくなり、エンゲージメントが高まります。
組織全体の効率性や生産性のアップに繋がり、結果的に企業としての成長につながります。
次世代のリーダーを育成する
エグゼクティブコーチングは、企業が現在抱える課題の解決だけでなく、次の世代のリーダーを育成するのにも役立ちます。
エグゼクティブコーチングの中でも焦点がよく当たる、「企業のビジョンと自身の目標を明確にする」「マネジメントやコミュニケーションのスキルを磨く」「時代や環境にあわせて柔軟に考える」ことなどは、次世代のリーダーにとってもいずれも重要です。
次世代リーダー候補の方が、エグゼクティブコーチングを取り入れることで、次世代リーダーにとって必要な要素を伸ばしていくこともお勧めです。
企業体質の改善
ハラスメントなどの問題が起こりやすい企業体質は、経営層の考え方が一因になっているケースもあります。
また、経営層が従来のやり方にこだわり、「新しい制度を導入できない」「新しいことに挑戦できない」というケースもあるでしょう。
エグゼクティブコーチングによって経営層が客観的に問題を考え、マネジメントやリーダーシップ、コミュニケーションなど見直すことは、企業体質や悪習慣の改善にも有効です。
エグゼクティブコーチングに必要な資格
コーチングに関する資格はあるものの、医師や弁護士のような業務独占資格ではなく、民間の資格になります。
そのため、資格を持っていなくてもエグゼクティブコーチングは可能です。
ただし、資格は一定のスキル・知識を保有し、十分な経験があることを証明するものでもあるため、資格を持っていないコーチにエグゼクティブコーチングを依頼するケースは少ないでしょう。

エグゼクティブコーチングに関する資格について説明していきます!
【エグゼクティブコーチングに関する資格】
- JEAエグゼクティブコーチ認定資格
- 認定プロフェッショナルエグゼクティブコーチ
- 国際コーチング連盟(ICF)認定資格
JEAエグゼクティブコーチ認定資格
JEAのエグゼクティブコーチ認定資格は、一般社団法人「日本エグゼクティブコーチ協会」が認定する資格です。
JEAはエグゼクティブコーチを「自己基盤が確立され、自らと相手を心から大切にできる、卓越したコーチング力を備えた経営者のパートナー」と定義しています。
エグゼクティブコーチの育成やエグゼクティブコーチングの普及を目的に活動していて、認定資格もそのひとつです。
JEAエグゼクティブコーチ認定資格の取得には、筆記試験(択一試験および記述試験)、実技試験にパスする必要があります。
また、一定以上のコーチング経験が受験資格になっていて、経験の少ないコーチが取得することはできません。
そのため、エグゼクティブコーチングに必要なスキルを有し、ある程度の経験を積んでいる証明になるでしょう。
認定プロフェッショナルエグゼクティブコーチ
認定プロフェッショナルエグゼクティブコーチは、ビジネスコーチ株式会社が認定する資格です。
ビジネスコーチ株式会社は、ビジネスパーソン向けのコーチングプログラムや人事コンサルティング、資格取得講座などを扱っています。
資格取得講座のひとつに「エグゼクティブコーチプログラム」があり、ビジネスコーチ株式会社がこれまでに行ってきたエグゼクティブコーチングのプロセスやツールの活用方法を実践的に学べる内容になっています。
また、エグゼクティブコーチングを学ぶだけでなく、プロのエグゼクティブコーチによるセッションを受けられるのも特徴です。
認定プロフェッショナルエグゼクティブコーチは、エグゼクティブコーチプログラムを受講することで受験資格を得られます。
ビジネス全般のコーチングを学ぶ「ビジネスコーチ養成講座」もあるので、講座受講を考えている方は、ニーズに合ったプログラムを受講しましょう。
国際コーチング連盟(ICF)認定資格
国際コーチング連盟(ICF)認定資格は、エグゼクティブコーチングに特化した資格ではありませんが、世界最大規模のコーチの非営利団体で、コーチングのスキル・経験を証明する資格のグローバルスタンダードとなっています。
国際コーチング連盟(ICF)認定資格は3種類あり、最初に取得できるのはACC(アソシエート認定コーチ)です。
さらに高度なスキル・知識を持つ場合は、PCC(プロフェッショナル認定コーチ)やMCC(マスター認定コーチ)というより高いランクの資格を取得できるようになります。
エグゼクティブコーチングにおけるコーチ選びのポイントについては後述しますが、経験の豊富さという点では、PCCやMCCの資格を持つコーチが候補になりやすいでしょう。

ICFの認定コーチは、人生全般の課題、キャリアやビジネスまで、多様な課題を扱うことができます。経営課題をコーチングの目的とする場合は、エグゼクティブコーチングを得意分野としているICF認定コーチを選ぶのがおすすめです。
コーチの選び方と比較のポイント
エグゼクティブコーチングに限った話ではありませんが、コーチングを効果的に活用するためには、コーチの選び方が非常に重要です。
特にエグゼクティブコーチングは一般的なコーチングよりも費用の負担が大きくなりやすいため、コーチ選びで失敗しないようにしましょう。
エグゼクティブコーチングでは、少なくとも以下の4点を確認してみてください。
【コーチの選び方と比較のポイント】
- コーチのビジネス・経営経験が豊富
- クライアント実績
- コーチとの相性
- コーチング導入前後のサポート
コーチのビジネス・経営経験が豊富
コーチは、クライアントがより良い行動・選択ができるように支援します。
そのため、経営者・役員をコーチングする場合、ビジネスや経営の経験は、必ずしも必要というわけではありません。
この点は、コーチングとコンサルティングの大きな違いです。
しかし、コーチ自身のビジネス・マネジメントへの理解度の深さは、企業のトップや経営層の抱える悩み・課題を正しく把握するために役立ちます。
同じような経験があることで、信頼関係をより築きやすいケースも考えられますし、コーチから提案できる選択肢の引き出しも多くなる可能性があります。
クライアント実績
エグゼクティブコーチングでコーチを選ぶ際は、クライアント実績も確認しておくと良いです。
「実際にどのような企業・人にコーチを行ったか?」は、コーチへの信頼に繋がること、また、自分に置き換えてコーチングを受けるときのイメージもしやすいでしょう。
クライアント実績は、コーチやコーチング会社の公式ホームページなどで確認することができます。
コーチングの導入を検討するときは、事前に各社のホームページをチェックしたり、直接コーチに問い合わせてみるなどして確認することをお勧めします。
コーチとの相性
コーチングでは、コーチとクライアントの相性がとても重要です。
相性が悪いと相手と信頼関係を築くのは難しく、結果も出にくくなります。
そのため、コーチングを導入する前に、実際にコーチと会って話を聞き、自身との相性を確認しておくと良いです。

中には無料のコーチング体験を行っているケースもあるので、相性を確認するために活用しましょう!
コーチング導入前後のサポート
ビジネスにコーチングを導入する際に重要なのは、コーチング導入前後の変化をしっかりと確認することです。
コーチングの効果を最大化するには、導入前の調査・準備も大切ですが、コーチング実施後の効果測定も行うようにしましょう。
例えば、コーチングの導入による成果をレポートしてくれる会社もあります。
コーチング導入前後のサポートは会社によって違うので、導入を検討する際は、その点も比較しておくと良いです。
エグゼクティブコーチング導入の流れ
エグゼクティブコーチングを導入する場合の一般的な流れについて説明していきます。
【エグゼクティブコーチング導入の流れ】
- コーチング目的の明確化・対象者の選定
- 担当するコーチの選定
- セッション(コーチングの実施)
- 効果測定
コーチング目的の明確化・対象者の選定
コーチングで成果を出すには、本人の意思が重要です。
エグゼクティブコーチングは受けるだけで「業績が上がる」「経営陣の意識が変わる」というものではありません。
コーチングを受ける本人が必要性を感じていなければ、結果は出にくいため、その点も意識して、対象者を選定するようにしましょう。
例えば、「現状に満足していて、変化を望んでいない人」「自分に自信があり、他者の話を聞きたくない人」などは、コーチングを受けても期待するような効果は出にくい傾向があります。
また、エグゼクティブコーチングを導入するときは、その目的も明確にしておいてください。目的が曖昧だと効果を測定するのが難しくなります。
もし目的や目標の設定で悩みがあるなら、事前のヒアリングなどからサポートしてくれるコーチング会社を選びましょう。
担当するコーチの選定
コーチングの目的や目標、対象者が決まったら、担当するコーチの選定に入ります。
コーチのプロフィールや経験などを確認して、目的に合った人材を選んでください。
無料体験が用意されていることもあるので、実際にコーチと会って相性を確認しましょう。
セッション(コーチングの実施)
コーチの決定後、実際にコーチングを実施します。
コーチとのセッションの頻度や期間などは、契約内容によって変わってきます。
コーチングは、1回のセッションで結果が出るわけではありません。
通常、月に1、2回のセッションを半年程度は継続することになるでしょう。
実際の実施期間などは、コーチとクライアントが相談して決めることになります。
効果測定
エグゼクティブコーチングにより得られた結果、企業内・クライアント周辺で起きた変化を確認するために効果測定・振り返りを行いましょう。
前述のとおり、コーチング実施後の振り返りをサポートしてくれる会社もあります。
必要に応じて「コーチングの実施期間を延長する」「コーチングの対象者を変更する」なども可能なので、効果を確認のうえ、判断するようにしてください。
エグゼクティブコーチングに関するよくある質問
結論|エグゼクティブコーチングで経営課題の解決へ
企業の代表や経営層を対象にしたエグゼクティブコーチングは、個々の行動変容を促すだけでなく、企業全体の成長にも繋がります。
一般的なコーチングに比べて費用は高くなるものの、上手く活用すれば経営課題を解決できて、十分な費用対効果が見込めるでしょう。
エグゼクティブコーチングを導入する場合は、目的を明確にすることに加えて、コーチ選びが非常に重要です。
保有する資格やプロフィール、クライアント実績、相性などを確認して、信頼できそうなコーチを選んでください。

経営に課題を感じている方は特に、この記事を参考にエグゼクティブコーチングを取り入れてみることを検討してみてくださいね。みなさんの企業やチームのより良い成長を願っています!