研究職からライフコーチへ──学び直しから見えた、“本物のコーチング”と人とのつながり

アメリカ・アイオワ州の自然豊かな土地で、ライフコーチとして活動している、りえさん。

研究職やマーケティング職を経て、人生の目的を模索する中でたどり着いたのが「人の成長を支援する」というコーチングの道でした。

既にフルタイムでコーチとして活躍する中、改めて「コーチとしての土台を整えたい」と感じ、CAM Japanでの学び直しを決意。

今回は、ICFの基準を学び直した意義や、セッションでの変化、そして“人とつながる楽しさ”を実感するまでのプロセスについて、等身大の言葉で語っていただきました。

木瀬 理恵(きせ りえ│プロフェッショナル リーダーシップ&ライフコーチ・国際コーチング連盟認定ACC
WEB:https://www.coachjoy.com/
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/riekise/
大阪大学薬学部卒業。奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科博士後期課程終了後に文系就職。日本の一部上場企業で営業とマーケティングを経験。2009年に渡米。米国のグローバル企業で上級研究員として最先端の遺伝子研究に携わる。
研究はできるけれど、これじゃない感がありミッドライフ・クライシスを経験。本来の自分や生きる目的を見つけることをきっかけにコーチングの道へすすむ。2020年コロナ禍にコーチとして独立。現在は、40代、50代の方の内面と成果の両面の本質的なブレイクスルーを支援する、リーダーシップ&ライフコーチングを提供している。

コーチングに出会うまでの葛藤と学びの旅路


――まずは、現在の暮らしやライフスタイルについて教えてください。

今はアメリカのアイオワ州という、広大なトウモロコシ畑が広がる田舎町に住んでいます。日本人の夫と、今年12歳になる息子との3人暮らしで、息子は今ちょうど夏休みに入ったところです。

仕事はフルタイムのライフコーチとして活動していて、平日はオンラインでセッションを行っています。プライベートでは、息子のサッカーの応援に行ったり、一緒に釣りをしたり、テニスや登山なども楽しんでいて、基本的にアウトドアが中心の生活ですね。あとは本を読むのも大好きです。

――コーチングに出会ったきっかけを教えてください。

私はもともと理系で、大学院を経て研究職に就いていたんです。でも40歳くらいまで、ずっと「自分探し迷子」状態でした。仕事はできる、やればできる、けれど何かが違う。その違和感をずっと抱えていました。

そんなときに読んだ本の中に、「成功している人は、人生の目的を持っている」と書いてあって、それがすごく心に残ったんです。「私も自分の人生の目的を見つけたい」と思って、いろんな本を読んだり内省を深めたりしていくうちに、「女性たちをインスパイアしたい」「もっとできると信じている人たちが本当にできるように支援したい」という思いが出てきました。

でも、当時はそれがコーチングにつながるとは思っていなくて。最初はビジネス寄り、マーケティングや起業支援みたいなことをしていました。ただ、やればやるほど、「テクニックだけ教えても結果が出ない」現実に直面するようになっていきました。みなさんやっぱり色々な理由があって、変化できないんですよね。

「これがないからできない」とか、「やろうとしてもできない」といった思いやブロックに対して「頑張れ!」と励ますことはできても、それだけでは変化が続かない。その経験を重ねた結果、「クライアントさんの本当の変化を起こすためにも、私自身が本格的にコーチングをきちんと学ぼう」と決意しました。それでまず、アメリカのスクールでコーチングを学んだんです。

――アメリカのスクールで学ばれていた中で、なぜCAM Japanに入り直そうと思ったのですか?

最初に学んだスクールはすごく独自性の強いところで、完全にそのスクール独自のメソッドでやっていたんですね。なので、ICF(国際コーチング連盟)の認定にも対応していなかったし、ICFの倫理やコア・コンピテンシーについても触れられることはなかったんです。

でもやっぱり、コーチとして活動していくなら、ベーシックなところの、倫理やスキルの基盤をしっかりと整えておきたいという思いが強くなりました。

もう一つは、日本語で学びたかったというのもあります。私のクライアントさんの中には日本人コーチの方もいらっしゃるので、日本でコーチングをどう学び、伝えるのかを知ってみたいとも感じました。それでもう一回学び直してみようと思って、1年ほど前からCAM Japanで受講するようになりました。

―― CAM Japanでの学びは、これまでとどう違いましたか?

CAM Japanでの学びは私にとっては、バランスが良くて土台になる学びだったと感じます。「コーチングってまさにこうだよね」っていう軸がしっかりあって、そこから幅を広げていくような流れで学べました。

もうひとつ印象に残っているのは、学びに来ている人たちの背景の多様さです。アメリカで学んでいたときは、すでにコーチングを受けたことがある人や、ある程度コーチングについて知識を持っている人が多かったんですね。

でもCAM Japanでは、「コーチングはまったく初めてです」という方が本当に多くて。コーチを目指している方だけでなく、会社員の方や医療従事者の方とか、それぞれの現場でコーチングを活かしたいという方が男女問わず集まっていますよね。そうした方たちが学びを通じてどんなふうに変化していくのか、そのプロセスを間近で見られたことは、私にとってもすごく新鮮で、深い学びになりました。みなさんとの多様な関わりや視点に触れられて、コミュニティの風通しも良くて、居心地がいいなと私は感じました。 

あとは、印象に残っているクラスで言うと、「コーチングと3つの変化」というクラスが特に良かったです。まさにコーチングで起きる変化のステップが、ぎゅっと濃縮されていて。「こうやって変化が起きるんだよね」ということを実際に体験して、その体験を他の方と共有しながら学べたのがすごく面白かったですね。私はもともとバイオ系の研究者だったので、脳科学に関するクラスも個人的にすごくハマりました。純粋に知的好奇心が刺激されて、学ぶのが楽しかったです。

――CAM Japanで学んだことを、実際のセッションでどう活かしていますか?

いちばん大きな変化は、「承認」のスキルを意識的に使うようになったことです。

以前のスクールではあまり積極的に扱わないスタンスだったので、私自身も自然に承認することがほとんどできていなかったんですよね。そこでCAM Japanで学びながら、「承認を意識して練習しよう」と思って、セッション中にも常に心掛けるようになりました。

でも、最初は以前の癖が抜けなくて、つい流してしまって、後から「あのタイミングで承認すれば良かったんだな」って何回も何回も復習したりして。なので、一時期はパソコンの画面に「承認」って紙を貼って、忘れないように工夫してました(笑)。普通にできるようになるまで、何度も練習して、振り返って、また練習して…。自然にできるようになるまではとにかく繰り返しでしたね。

その甲斐あって、承認ができるようになってからは、セッションの中でクライアントさんがポジティブな変化に向かいやすくなったと感じています。以前の私のコーチングは、どちらかというとちょっとセラピーよりだったんですけれど、そこからより“本来のコーチング”に近づいていった感覚があります。

クライアントさんのポジティブな変化につながる割合が増えていると感じられるようになったのは、本当によかったなと思っています。

比較する癖と、自分に対するジャッジとの向き合い


――コーチとして活動するなかで、葛藤を感じたことはありましたか?

めちゃくちゃありました。特に、活動を始めた最初の1〜2年は、セッションでクライアントさんに大きな変化が起きないと、まずいなと思って困ったりしてしまって。焦りや葛藤がありましたね。

他の人と比較して、「もっとできるコーチだったら、もっと違った成果が出てたんじゃないか」と思ってしまったりもしてね。そのことを自分のコーチに相談して、「そんなことないよ」って言ってもらっても、「いや絶対そうだ」って思ったりとか。

でもCAM Japanでの学びも含めて、色々な経験を積んで、アプローチの種類が増えてきてからは当初のような焦りはなくなってきましたね。

あとはやっぱり、自分もコーチングを受けて、コーチに相談しながら自分と向き合うということを重ねていったことは大きいと思います。

実は昔は、「自分にコーチなんて必要ない。自分で何とかできるし」って思っていたんです。今振り返ると本当にすいませんって感じなんですけれど(笑)。今ではむしろ逆で、「コーチングを受けずに誰かをコーチングするって、すごく危ういことなんだ」と思うようになりました。

私たちって、誰もが必ずブラインドスポットや偏見、リミティングビリーフ(制限的な思い込み)を持っているんですよね。それは自分だけだと絶対に気づかなくて、盲点があるっていうことすら気がつかない。偏見とかジャッジメントとかはみんな持っているんだけれど、それに気がつかずに、それに対して何もしないまま他人をコーチングするということは、つまりそのまま自分のジャッジメントやリミティングビリーフをクライアントに伝えているっていうことになると思うんです。

コーチングを受けるようになって、自分のジャッジメントやリミティングビリーフを目の当たりにしてからは、それに気がつかずにコーチングをすることの怖さがすごく分かるようになりました。

私がすごく尊敬するビジネスのメンターコーチの方が、「自分が何を知らないかを私たちは知らない(You don’t know what you don’t know)」というのをよく仰るんです。自分のジャッジメントに気づかせてくれたり、「何を知らないか、そもそも知らない」という状態に気づかせてくれる存在として、コーチは本当に必要なんだなと思っています。

人とのつながりを「楽しめる」ようになった変化


――コーチングを学ぶ中で、プライベートや人間関係の面で変化を感じたことはありますか?

すごくありますね。180°くらい変わったと思います。

私はもともと理系の研究職で、人との関わりに対してはどちらかというと距離を置いていた方だと思うんですけれど、コーチングを学んでからは、コミュニケーションを含め繋がりを大切にするようになりました。

以前はすごく内向的で、人と関わるとか、人に感謝したり優しくしたりするということがいまいちピンときていなかった自分がいたんですけれど。それが、コーチングを学ぶにつれて、だんだんと人と繋がる楽しさや面白さも分かるようになって。より人に対して純粋に好奇心がもてるようになったというのかな。これもやっぱりジャッジメントがなくなって、相手と自分を比べるようなことをせず、フラットな関係で、人それぞれの面白さを感じながら話ができるようになったという変化かなと思います。

コミュニケーションは、特に家庭内でガラッと変わりました。

CAM Japanのクラスでも、「何が起きたかではなく、それを自分がどう解釈するか」という話があったと思うんですけれど、それを知っているだけで、例えば夫にイラっとした時に、イラっとしたまま返さず、一旦解釈の間を置けるようになりました。もちろんイラっとはするんですけどね(笑)。他の場面でも、「ちょっとやだな」って思った時にそのまま「やだな」っていう気持ちで行動し続けずに、1回待つ。そういう思考の癖というか、プロセスができるようになったのは、CAM Japanを含めコーチングのおかげですね。

あとはやっぱり、コーチングを学ぶ中で自分と向き合うことも多いので、自分の親との親子関係や過去のことに対して、ある程度自分の中で整理がついて、自分と過去との関係性も良くなりました。もちろんすべてがクリーンになったわけではないですけれど、自分と自分の関係も、自分と他人との関係もより深く面白いものになったと感じています。

自分が変わるからこそ、人の変化も支援できる


――今後、コーチとしてどんなふうに活動していきたいと考えていますか?

目指すところはあるようでない、というと不思議な言い方になってしまうんですけれど、コーチングって「マスターしてこれがもう終わりだ」っていうことが多分ないものだと思うんですよね。

だからこそ楽しいし、学びに終わりがないからこそ、どこまで行けるかなっていうのをやりつづけていきたいと思います。その中で、幸い私の周りには、自分のコーチを含め10年、20年とコーチをされている素晴らしい方々がたくさんいるんですけど、彼女たちのようにクライアントに信頼されてコーチングをずっとを続けていくことができたらいいなと思っていますね。

私思うんですけど、コーチングを学ぶにしろ実践するにしろ、まず1番最初のクライアントって「自分」じゃないですか?自分が一番最初で一番付き合いの長いクライアントみたいになるんですよね。自分が変化すればするほど、スキルだけじゃなく在り方も含めて「コーチ」になっていけばいくほど、人間性も育てていけるというか。コーチってなんて最高な職業なんだろうと思います。

――最後に、コーチングを学ぼうか迷っている方にメッセージをお願いします。

コーチングって対話で進めるものなので、書籍や動画だけで学ぶのはやっぱり限界があると思いますね。

たとえば料理番組を見ただけで「料理ができるようになった」「おいしいものがわかるようになった」って言えないのと同じで、実際に対話のなかで経験を重ねながら、人との関わりのなかから学んでいくところが大きいですよね。だから学ぶのなら、まずは体験してみる、実践してみる、というのがいいと思います。

もう一つ、これは私自身が大きく考え方を変えた部分でもありますけれど、最初はICFの倫理規定やコア・コンピテンシーに対して「ルールっぽくて窮屈だな」と感じていたんです。

でもコーチングを続けて、倫理規定やコア・コンピテンシーを読むようになったら、読めば読むほど、「これは本当に大切なことが書いてある」と思うようになりました。

特に、“コーチ”という肩書き自体は誰でも名乗れるようなものだからこそ、一定の基準を持って倫理やスキルを学んでおくことは、コーチとしてだけでなく業界全体の信頼にもつながると感じています。

コーチングをこれから学ぶ方もいま学んでいるという方も、ICFに限らず、そうした「自分の軸になる基準」に一度しっかり触れてみることは、とても意味のあることだと思いますよ、とお伝えしたいですね。


CAM Japanでは、コーチングについて知ることができ、コーチングに関する悩み、疑問なども解消できる双方向型の無料説明会を開催しています。

「自分にあったスクールを探したい!」「スクールを探しているけど、情報が多くて迷子…」という方から「コーチングはまだよくわからないけど、なんだか気になっている」という方まで、幅広くお気軽にご参加いただける場となっておりますので、ぜひこの機会をご活用ください。