サウナや銭湯を愛し、デザイナーとしても多彩に活動するさおりさん。
戦略的な目的ではなく、“なんか楽しそう”から始めたコーチングの学びは、暮らしや仕事、そして人との向き合い方に静かに深い変化をもたらしました。
「”テーブルの上に置くように”話す」「コーチ・クライアントである前に、”人”である」。
そんな言葉の背景には、自然体のままで人と関わろうとする姿勢と、自分の“手触り”を信じる感性があります。ゆっくり、じわじわと進んできた学びの旅路を伺いました。
大竹 沙織(おおたけ さおり)│DSCL Inc. / 会社員 / デザイナー
Website:https://bento.me/saoriotake
企業のブランディングやウェブサイト制作に携わりながら、プライベートでは銭湯やサウナをテーマにしたイベントやグッズを企画・デザインしています。
デザインの仕事と並行して、サウナや銭湯でも活動中
⸺今どんな活動をされているか教えてください。
デザイン事務所で働いていて、デザイナーをしています。
主にWebサイトの制作や企業のリブランディングに携わっていますが、プロジェクトによっては、アウトプットがWebだけに限らず、ワークショップや研修みたいな形になることもあります。
プライベートワークとしては、サウナや銭湯に関する活動をしています。
たとえば、サウナや銭湯が好きな人や、ちょっと興味がある人が楽しめるようなクリエイターズマーケットをチームでプロデュースしていて、オリジナルのTシャツや小物などのグッズも制作しています。
うーん、もうちょっとかっこよく言いたいんですけど(笑)、「ものづくり×サウナ・銭湯」みたいな活動をやっています。
コーチングについては、今は本格的に仕事にしているわけではないですけど、知り合いが「ちょっと考えを整理したい」という時に声をかけてもらうことがあります。1回だけ行うこともあれば、継続的にやっていることもありますね。
普段の仕事でも「やりたいこと」や「ありたい姿」を言語化したり、リアルタイムで整理したりしていくプロセスがあるんですけど、それをコーチングに取り入れたりしています。
例えば、コーチングの中で、「頭の中を整理したい」「今までやってきたことを可視化したい」というニーズがあるときには、MiroやMacのフリーボードといったオンラインホワイトボードツールを使います。
リアルタイムで一緒に見える化しながら進めて、「今こういう流れできてるね」「この言葉が大事ですね」「大事なのはこの3つなんだね」みたいなことを共有したり。
デザインとコーチングの間には、“共通のプロセス”があると感じていて、デザインのプロセスのエッセンスがコーチングにもすごく活かせるなって思っています。

コーチングの学びとの出会いは、“なんか楽しそう”
⸺コーチングを学ぼうと思ったきっかけは何でしたか?
きっかけは、職場の人が「CAM Japanっていうところでコーチングを学んでみようと思ってる」というのを聞いて、「私も行ってみようかな」と、説明会についていったことです。
特に戦略的に学ぼうとか、キャリアに活かしたいとか、そういう明確な目的があったわけではなくて、「なんか面白そう」「なんか楽しそう」という感覚が大きかったですね。
でも、私の中で漠然と、「もう少しうまく考えたい」「考え方を変えたい」みたいな思いはありました。
うまく言えないんですけど、例えば「やりたいならやればいいじゃん」みたいな単純化された考え方とは違う、人ごとに出す答えが違うような、創造的な考え方を磨きたいと思っていたんだと思います。
CAM Japanの説明会を聞いて、コーチングにはそんな兆しを感じて「なんか良さそう」という印象に繋がったのかもしれないです。
なので、仕事に対する焦りや不安が軽くなったら良いな、くらいの目論見はあったけど、それ以上の目的はあんまりなくて。
CAM Japanは、そんなにビジネスライクな雰囲気もなかったので、受講してみようと思いました。
「わかるけど、わからん」から、じっくりゆっくりつくられた”アンテナ”
⸺実際に学び始めてみて、どんな印象がありましたか?
私は、「コーチ的コミュニケーション基礎」、「コーチ的コミュニケーション統合」と、「グループメンターコーチング」の3つのクラスを受けたんですけど、まず最初は講義のやり方に驚きがありました。
セッションタイプというか、クラスの中で講師が説明して、インプットするだけじゃなく、みんなで話すことも学びの中に含まれているようなスタイルが初めてでした。
クラスの受講中は「わかるけど、わからん」みたいなことも多くて「なるほど…?」たいな感じもありました。クラスの中で出てくる言葉は、日本語としては理解できるけれど、自分でできるかと言ったら別問題で。
言葉の理解の先の「これか!」みたいなところには全然足りなくて、「わ、できない」みたいな。できないというか「できてるかどうかもわかんない」というような感じでした。
しかも、セッションの中では、スキルとか時間配分とか、対話の流れとか、気にしなきゃいけないことがいっぱいあるし、「クライアントさんの満足度あげなきゃ」みたいな気持ちも生まれてしまって緊張もしちゃうし。考えることがすごく多いなと思っていました。
⸺そこからどのような変化がありましたか?
グループメンターコーチングのクラスで、「フィードバックシート」という教材を使ったんですけど、あのシートで、かなり定性的だと思っていたコーチングのスキルが、ちょっと定量的なものに近づきました。
できているところと、もう少しできるようになりたいところが可視化されたことや、それを他者からの評価でチェックしてもらえたことで、「自分はできてるんだ」と思えて。
「これを”レベル1”としていいのか」みたいな感じが分かったことで、ちょっと自信が持てたし、できていることとできていないことがわかってきて、意識する方向も割とクリアになりました。
私は、あのフィードバックシートによって、クラスで言われていたことと自分がやっていることが接合されて、「ワークブックのこの部分がこのことか!」みたいに分かるようになりましたね。自分の「具体」のことが、教材の文字と繋がってきた感じがしました。
クラスを受けてからここまでを振り返ると、多分私の変化的なものは、かなりじっくりゆっくりなことが多いのですけど、じっくりゆっくりの中で、私が変わったというよりも、「私の中にアンテナが1個作られた」みたいな感じがしています。
パラボラアンテナみたいなイメージなんですけど。「このコミュニケーションにはこういう意味があったんだな」とわかってきたり、関係性の意味とかに気づいてきたり。「意味あることだったんだ」って分かることで、アンテナが信号をキャッチできるようになった、みたいな。
受講してる時は「アンテナ建設中」という感じで、「テスト運用してるけど、読み取りきれてなかったり、受け取り切れてないものある」という感じだったんですけど。
最近になって、”アンテナバージョン1”が完成しました!みたいなところにいると思います。そのアンテナで、色々な日常を過ごしてる中でも、キャッチできるものが増えたというか。とっかかりになることを、ちゃんと拾えるようになってきたというか。
自分のアンテナがキャッチしたものを「なんでこれをキャッチしたんだろう?」と考えられるようになったという感じですかね。
「コーチやらなきゃ」から「ファミレスでのおしゃべり」へ
⸺他に、学びの中で印象に残っていることや気づきはありますか?
クラスのフィードバックの中で、「セッションの空気感によって、クライアントが『クライアントやらなきゃ』という感じになってしまうことがある」という話があったんです。
それを聞いて、「それは全然やりたいコミュニケーションじゃないな」と感じたんですよね。クライアントってやんなきゃって思ってやるもんじゃないよな、と思って。
その時に「じゃあコーチも、コーチやんなきゃ!で、やるもんでもないのかな」と考えました。コーチという役割をやりきらなきゃっていうのは、コーチング自体の考え方としてちょっと違うかな?みたいな。
「『コーチやらなきゃ』じゃないのなら、もうちょっとナチュラルでいいのかもしれない」と思った時に、私の中で、「もっと気楽に、『ファミレスにいるようなリラックス状態』でやってみよう」というイメージが湧いたんです。
そしたら、変な力みが抜けて、自分ができることとコーチングを繋げることができました。コーチングの中で自分のこういうところは活かせるな、というのがわかった感じです。
あと、自分の中で少しだけ感じていたざらつき…クライアントさんの話や様子から伝わる違和感というか、手触りの違いみたいなものがあるんですけど。
以前は、そのざらつきをクライアントさんには伝えず、通りすぎていたんですけど、それをキャッチして、クライアントさんに伝えていいんだな、と思うようになりました。
日常の会話の中では、例えば飲み会とかで、ちょっとした違和感についてじっくり話すことはあんまりできないかもしれないですけど、コーチングだったら、そんな時間をつくることができるんだなと気付いて。しかもそれが相手の役に立つのなら、そりゃいいなあ、と思いました。
⸺「すごいコーチにならなくていいんだ」という気づきもあったそうですが
コーチングって、”クライアント”とか”コーチ”というラベルは、一応貼られているけれど、前提としてあるのは、「人である」ということで。”人である”というのを忘れて、”コーチ”や”クライアント”になるのは、そうじゃないなという感じがある気がします。
それで、「人である」の、”人”って、みんなそれぞれ違うよな、と思うんです。
その人が元々生まれつき持っているものや、経験の中で大事だと思って培ってきたこととか…その人ならではの色々なものと、コーチングのスキルは織り交ざるのかもしれないな、と思って。
織り交ぜることができるなら、私も、自分が感じて自然にキャッチしたことをクライアントさんに伝えられる。それをするのに、「すごい功績」とかなくても、別にそのままでいいんだな、と感じました。
それに、CAM Japanには色々な人がいて、相互コーチングをやると、「こんな思いがあるんだ」とか「わあ、個性的だな」と思うこともあって。それぞれの個性的な良さや面白さを感じていったことによっても、「すごくなくていい」ということをじわじわと思っていった感じですかね。
「これが欲しかったコミュニケーションだ」とじわじわ気づいた
⸺”アンテナ”の建設や「コーチやらなくていいんだ」という気づきは、今のさおりさんにどのようにつながっていますか?
相互コーチングをやったり、自分で色々考えてきた中で、「自分が欲しかったコミュニケーション」が仕事上や日常で見つかることがちょこちょこあります。CAM Japanで学んで3年経ったくらいで、いまそこに繋がってきた感じがするなと思っています。
「欲しかったコミュニケーション」っていうのは、要望みたいなものを吸い取る・抽出するのが目的ではなく、「ただただそこに置く」みたいな感じのコミュニケーションのことなんです。
例えば、テニスのラリーみたいな、ボールをとめずにパコンパコンとコミュニケーションして、どんどん情報を伝えて評価判断していく感じというよりも、ボールを「テーブルに置く」という感じ。「あ、ここにこういうのがありますね」ということを認めてから、それについて話すみたいな。
テーブルに置いてあるものを、まずは受け取っている感じや、応援とか承認するような雰囲気がベースにあるコミュニケーションが、私が欲しかったものの1つかな?というのに最近だんだんと気づいてきました。
⸺ご家族やご友人、自分自身との関わりにも変化はありましたか?
家族、友人、自分自身との向き合い方としては、話し合いのスタイルが1つ増えた感じがしてます。
以前は「不満があった時には代案を出さなきゃ」と思っていて。「こうして欲しい。その妥当性は・・・・」を説明しなきゃいけないという風に思ったんですけど、今はその前の段階の、「自分はこう感じている」ということを伝えて、それに対して相手がどう感じたかを聞いてみる、というようなことができるようになりました。
自分自身との向き合い方的なところは、捉えるものの「最小単位」がより小さくなったみたいな感じですかね?細かいことに気づくというよりも、「これってストレスだったんだな」ということがより分かるようになったというか。
以前は、「これをストレスと思うなんて悪いこと」みたいな、そんなことを思っていました。でも今は、「ストレスはストレスなんだよな」という”そのまま”を、純度高くキャッチできるようになりました。
コミュニケーションとしては、それを相手にも受け取って欲しいという気持ちでテーブルの上に置くみたいなアウトプットも意識できるようになってきたかなと思ってますね。
今は“途中”。でも質の高い会話のある日々を目指して
⸺今後、どんなふうにコーチングや対話を活かしていきたいですか?
私にとって、自分の生活の中で「会話」は結構大事だなと思っていて。会話にも色々あるなと思うんですけど、「質の高い会話」みたいなものが多分私にとってはすごく重要だと感じています。
なので、それをもうちょっとできるような時間を多く取りたいなと最近思ってきました。
それは、今周りにいる人とのコミュニケーションもそうなんですけど、もしかしたらコーチング的なことにもうちょっと力を入れてやるのもいいかなと考えていいます。
CAM Japanでも、パートナー団体へのコーチング提供の機会がありますけど、そういうことを、できる範囲でやってみることで、「今日はいい話したな」みたいなホクホク感がいっぱいあるといいかもなと思っています。
⸺最後に、これからコーチングを学ぶ方や、今学んでいる中で迷っている方へのメッセージをお願いします
えー、なんだろう?みなさんどんなことに悩んでいるんですかね…?
うーん、コーチングを学んでいて、コーチングの考え方だったり価値観だったりに「正論ではあるけど、現実はそううまくはいかないのでは」みたいな葛藤がもしあるとしたら、その違和感にはとても共感します。
でも、もうちょっと気長にやってもいいんじゃない?という気持ちもあります。
クライアントさんの変化も結構ゆっくりなこともありますよね。1年ぐらいずっと話を聞いていて、ある日突然、「あ!こういうことか!」という気付きがある、みたいな話も聞きますし。
例えていうなら、飛行機で目的地に行くのと船旅をするみたいな違いかな?飛行機の直行便で行ける場所もあれば、客船でゆっくり話しながら見られる景色もあるみたいな。
人の変化のスピードは色々で、ズバッと進む時もあるけど、ゆっくり変化することもあるから。
私自身はゆっくりじわじわ変化するタイプだと思っているんですけど、そんな私も楽しくやれているから大丈夫だよ、と思いますし、ゆっくりな変化にも慣れてみてもいいのではないかな、と感じますね。
CAM Japanでは、コーチングについて知ることができ、コーチングに関する悩み、疑問なども解消できる双方向型の無料説明会を開催しています。
「自分にあったスクールを探したい!」「スクールを探しているけど、情報が多くて迷子…」という方から「コーチングはまだよくわからないけど、なんだか気になっている」という方まで、幅広くお気軽にご参加いただける場となっておりますので、ぜひこの機会をご活用ください。