新たな土地・ドイツで双子の育児に奮闘しながら、自分の可能性を広げる挑戦を続けている、しっちゃんさん。
もともと人の成長や変化に寄り添うことに強いやりがいを感じ、「どこにいても働ける力を身につけたい」という思いから、コーチングという世界に飛び込んでキャリアの再構築に挑んでいます。
正解のない問いに向き合いながら歩む中で実践を積み重ねてきた彼女に、コーチングがもたらした変化を伺いました。
しっちゃん│ライフキャリアコーチ
ドイツ駐在帯同中・1歳双子のママ。
ライフキャリアコーチとして「誰かの正解に答える人生から自分の理想の人生を実現していく」人を伴走しています。
海外移住と育児の中で見つけた、新たな働き方への一歩
――今、どんな暮らしをされていますか?
2024年4月から、家族でドイツに移住しました。現在は1歳半の双子を育てながら、子どもたちが保育園に行っている平日日中の時間を使って、コーチングの学びや実践に取り組んでいます。
もともと私は仕事をしたいタイプなので、ドイツへの移住が決まって、「今までと同じ働き方はできないにしても、どこにいても働ける力を身につけたい」という思いがありました。そこでまずは女性向けのキャリアスクールに通い始めて、自分の強みや価値観、やりたいことを見つめ直しました。そのプロセスの中で「本当にやりたいことは何だろう?」と自分に問い直したときに、出てきたのが“コーチング”だったんです。
――「私のやりたいことはコーチングだ」と思った背景には、どのような思いがあったのでしょうか?
前職の時にコーチングを受ける機会があったのですが、その経験が印象に残っていて、「私もやってみたい」と思うようになったのがきっかけの一つです。
また、前職では部下の育成に関わることや接客をする機会がありました。部下の育成には難しさを感じながらも、部下の中から「あ、これやりたい。頑張りたい」「達成するために変わりたい」というようなモチベーションを引き出して変わっていくのを見るのがすごく楽しくて、やりがいを感じていました。
接客をするときも、お客様がただ商品を買うということだけではなくて、その商品の背景にストーリーがあったり、たまたま私との話したことがきっかけで、「この商品を手元において頑張ってみます」みたいなことをおっしゃっていただけたり、そういう瞬間がとても楽しくて。
「今日お客様がたまたま出会ったのが私で、たまたまのご縁だけれども、その方がポジティブになって前に進んでいけるきっかけの一端を自分がつくることができた」って思うことが、自分にとってやりがいを感じることなんだなと気づきました。そんな自分の経験や価値観を見つめ直す中で、「コーチングは、自分のやりたいこと・大切にしたいことにつながっているかもしれない」と思いました。
正解のない問いに向き合ったCAM Japanでの学び
――CAM Japanで学び始めて、どんな印象を持ちましたか?
「コーチングってこんなに抽象度の高いものなんだ」と思いました。スキルや手法を学ぶだけでなく、「”変化”とは?」「”気づき”とは?」といった本質的で抽象的な問いに向き合う時間が多くあって、最初は頭で理解しようとして「わからない……」とモヤモヤして焦ることもたくさんありました。「学べば分かる」「学ぶとは分かることだ」という固定観念が、自分の中にあったのだろうなとも思います。
CAM Japanの学びは、「正解を教える」というよりも、「相手に余白を残す」姿勢を大事にしている印象があります。ワークブックの説明や講義の内容も抽象的に設計されていて、クラスメイトや講師の方と対話をしていくような感じでした。
すぐには理解しきれないもどかしさを感じて、講師の方に質問して、それでもわからなくて…みたいなこともありましたが、「わからない」と思いながらも仲間と話し合い、実践で試行錯誤していくと、ある時、「ああ、こういうことか」と腑に落ちるような瞬間が訪れるんです。今でもこの試行錯誤は続いていて、腑に落ちる瞬間もあります。CAM Japanでコーチングを学び始めて以来、こういう学びのプロセスをずっと味わい続けていると思います。
あと、クラスには多様なバックグラウンドを持った仲間が集まっていて、すごく色々な方がいらして本当に面白い出会いがいっぱいあったなと思っています。経営者、フリーランス、人事担当など、立場も経験も異なる人たちと、抽象度の高い問いを「ああなのかな?こうなのかな?」と対話し合うことが、学びをより豊かにしてくれました。
もちろん、すぐに理解できないもどかしさや、「この状態でコーチングをして大丈夫なのかな?」という不安はありました。特に最初の3ヶ月ほどは、「私は分かっていないのでは?」という焦りや、「これで本当にできているのか?」という思いと葛藤していました。
モヤモヤと葛藤を超えて実感した成長のプロセス
――「わからない」ことへのもどかしさや不安との葛藤もある中で、どのように前進していかれたのでしょうか?
「コーチ的コミュニケーション統合」のクラスの終盤で、「コーチングを有償で実践してみましょう」というミッション(宿題)が提示されたんです。その時は正直、「いやいや無理でしょ!」と思いました。「スキルもまだ足りないし、自信もないし。自分なんかが対価をいただいていいんだろうか?」という思いが強くて、踏み出すのがとても怖かったです。
それでも、やっぱりコーチングって“やらないと始まらない”。経験を重ねてこそ、少しずつ熟練していくものだって感じて、「これはやらないと」と。思い切ってFacebookで「コーチングを受けたい方いませんか?」と投稿し、ご連絡くださった方にセッションをさせてもらいました。そうしたら、実践を重ねていく中で、その経験を経て、学んできた知識や概念がじわじわと繋がっていく感覚を得られました。その頃から、自分の中で少しずつ変わってきたかなと思います。
以前は、「スキルがまだないからできない」「対価をいただくなんて、まだまだ」と思っていましたが、「ここまではできるからOK」という明確なラインがあるわけではないんだなと感じるようになって。「”やればやるほど”だな」と思いました。逆に、たとえどれだけプロとしての実績を積んだとしても、やっぱりやればやるほど熟練していくのだろうな、という心の持ちようになれてからは、「やるしかない」と思えました。
それで、実践を重ねるために、CAM Japanの相互コーチング掲示板へも投稿して、相互コーチングをしてくれる方を募集したのですが、フラットな環境で多様な仲間と実践できたことは、とても良かったと思います。今でも相互コーチングはさせていただいているんですけど、長年コーチングに携わっている方から学ぶこともあれば、学び始めたばかりの方と「こうかな?」と模索し合いながら一緒に進んでいく感じもあって、その過程自体が励みになりますね。
実践を重ねるようになってからも、CAM Japanで授業を受けていたのですが、以前の自分ならモヤモヤしていたような抽象的なことにも、「今すぐにわからなくても、うまくできなくても、いつかきっとこれが繋がる時が来るだろう」みたいなスタンスでいられるようになりました。
例えば、「『クライアントさんが覚悟を持つ』ってどういうことなのか?」って、ワークブック上の言葉で説明されていても、結局はやってみないとわからない。テクニックとかスキルを教えてよ!と思ってしまいますけど、そういうことをすぐ教えてもらえてできるわけでもなくて。実際にコーチとして、クライアントさんにどう向き合えるだろうかと考えていくうちに、学んだことがだんだんと繋がって、自分に落とし込まれていくんだなと思います。
――「瘡蓋(かさぶた)は勲章」という言葉が印象に残っているとも伺いました
そうなんです。最初は、「瘡蓋」ってこういう漢字を書くんだって思ったのもありましたけれど。(笑)この言葉がクラスのグラウンドルールの一つとして出てきたのですが、初めて受け取った時はちょっと怖かったんですよね。
「どんどん実践して失敗しましょう」「失敗やうまくいかなかった経験も挑戦した証として誇っていいですよ」という意味だと捉えているんですけど、私はこれまで割と失敗を避けるタイプだという自覚があったので、「う、大丈夫かな」「どんどん失敗していくことが求められるんだ…」みたいな怖さがありました。
元々は、クラスや会議の場で発言することも実は結構苦手だったんですよ。「これでいいのか?これ合ってるんだろうか?」とか、「今これを言ったら場の空気を止めちゃわないかな?」とか、そういうこと考えすぎてなかなか言えないタイプだったんです。
なので最初は、積極的にクラスに関わっていけるんだろうかという不安があったんですけど、進んでいくにつれて、結果的にクラスの中ではすごく積極的に質問できる自分でいられたなと思っています。
それはやっぱり、学んでいく中で、「モヤっとしていることがあるなら、それをアウトプットして誰かと一緒に考えていくことでこそ、自分の身になるんだな」と思えたからというのがあります。
あと、何を言っても受け止めていただける、いわゆる心理的安全性のある場作りを、どのクラスでも本当にすごく大事にされているのを感じられていたので、すごく安心して発言させていただけたのもありました。
発言やアウトプットをして、もしかしたら時にはそれが失敗になるかもしれないし、うまくいかないこともあるかもしれないんですけど、そうだとしても、「アウトプットすること自体がすごく大事だ」と思えるようになりました。
なので、今ではコーチング以外の色々な場面でも、「瘡蓋は勲章だ!」と思うことを心に留めて日常生活を送るようにしています。
コーチングがもたらした家族との関係とこれからの挑戦
――学びを通じて、生活や家族にどんな変化がありましたか?
そうですね。例えば今年の初めあたりに、イライラやモヤモヤで心が押しつぶされそうになった時期があったんです。ずっと家族の誰かが体調を崩しているような状況が続いてしまって、子どもたちは保育園に行けないし、自分の思うように進まないことが多くて。
でもそんな時こそ、誰かのせいにせず、「今、自分にできることは何だろう?」「今、私は本当は何を思っているんだろう?」と自分に問いかけて、自分の気持ちに素直に向き合いながら、行動を変えていくことを意識してみようと思えました。この考え方は、コーチングを学んだことで身についた大きな変化だと感じています。
あと、実はこの夏、スペインへ巡礼旅に行くというチャレンジをしてきます!子どもたちと主人にお留守番をお願いしようと思っているのですが、以前の私なら「子どもを置いて旅に出るなんて無理」と思って、そこで終わっていたと思うんです。
でも今は最初から無理だとは思わずに、「どうやったら実現できるかな?」と考えられるようになって、この目標も不可能ではないのではないかと思えるようになりました。実際に先日、フライトチケットも取りました!こんな風に思えるのも、コーチングのおかげかもしれません。
コーチングをしっかり学んだからこそ、「自分の心に素直になって、自分に制限をかけずに、どんどん行動して目の前の現実を変えていこう」みたいな意識が、自分の中の人生哲学のような形で少しずつ落とし込めてきているかなと感じています。
それから、私の気持ちの変化としては、やっぱりコーチングを仕事にしていきたいと改めて思えるようになりました。誰かの目標や、本当の自分の姿へ向けた変化にご一緒させていただくことって楽しいな、これを仕事にできたら最高だな、と思って。
元々どこででも仕事をできるスキルを身につけたいという思いがありましたし、いわゆるフリーランスでコーチングやっていくことを見据えて学び始めたところはあったので、今は、「実際にどうやってドイツでやっていけるか」を模索している段階です。少しずつでも、自分の仕事にしていけるように進めていきたいなと思っています。
――そんなしっちゃんさんの姿を周囲の方はどのように受け止めていますか?
周りからは「自分だったらへこたれちゃいそうだけど、前向きに行動に変えていてすごいね」とか「前に進んでいるね」と言ってもらえることがあります。「自分ではそんな意識はなくて、まだモガモガしている感じなんですけど。周りの方の言葉を聞くと、「葛藤しながらも前に進んでいる」って感じてもらえているのだなと思えて、それはすごくうれしいですね。
自分の「正解」をつくっていく学びの旅へ
――これからコーチングを学ぼうか迷っている方や、かつてのご自身のような方に向けて、メッセージをいただけますか?
そうですね、コーチングって本当に「正解のないもの」を扱う世界だと思うんです。私にとってCAM Japanでの学びは、「自分にとっての正解」を探していく旅でもありました。
誰かから答えを教えてもらって理解するのではなく、わからなくても、自信がなくても、実践を重ねていく中で、その過程も味わいながら、自分なりの意味や答えを見つけていく。そんな経験を通して、スキルを超えた「自分の財産」のような学びを得られたと感じています。
あと、私が学んでみて思いがけず得られた大切なことが、「人とのつながり」「コミュニティの力」でした。同じクラスで学んだ方とは今でも「最近どう?」みたいなやり取りをしていたり、「元気かな?また久しぶりに連絡取ってキャッチアップしたいな」と思えるような関係性を築けたり。ちょうど昨日も相互コーチングをしていて、いつかリアルでお会いしたいですねという話になったんです。
国も年齢も職業も属性も超えて、こういった繋がりができるのは、やっぱりコーチングが人生全般を扱うものだからこそで、ご縁なのではないかなという風に思います。コーチングで繋がった方とは人生の話をたくさんしているので、お互いがこれからどんな人生を歩んでいくのかということが常に気になっていくような関係性でいられるんじゃないかと思いますし、そういう出会いを楽しみながら、自分の人生もより豊かにしていけるんじゃないかなと感じています。
世の中には、いわゆる資格を取るための手法を身につける学びとかテクニックとかもあるかもしれないんですけど、そういうことだけではなくて、コーチング的な「在り方」や哲学を身につけて、自分の人生や誰かの人生に役立てていきたいと思われる方には、CAM Japanでの学びはすごくおすすめしたいです。
学んでいく中で、難しさやもどかしさを感じる瞬間もきっとあると思うんですけど、誰かが決めた正解を探すのではなく、コーチングを学ぶ方自身が「自分にとっての正解」をつくっていくことや、その過程を仲間と一緒に模索しながら味わっていくことで、コーチングがその方にとって「スキルを超えた財産」になっていくんじゃないかなと思います。